【3月16日 AFP】僧侶らの抗議行動から大規模な暴動へと発展し、中国軍が治安態勢を強化している南西部チベット(Tibet)自治区ラサ(Lhasa)で15日、連続した銃声が聞こえたと、現地から脱出した外国人が16日、証言した。

 ラサで医療関係のNGOを運営する元米軍海兵隊員のジェラルド・フリント(Gerald Flint)さんは、到着した四川(Sichuan)省成都(Chengdu)の空港で16日、「消音された銃声を聞いた。間違いない」と証言した。フリントさんによると15日に中国政府の治安部隊がラサに送り込まれた市街は依然、無秩序状態が続いたという。「人々の動きを完全に制御しようとしていた。市街には完全武装した兵士が配備され、兵士を乗せたトラックも多数待機していた。大量に動員されていた」という。

 また、15日の午後から夜にかけてさらに多くの爆音が聞こえるようになった。「爆音だったか銃声だったか」との問いにフリントさんは「両方が混ざっていた」と答えた。

 前週ラサで始まった中国政府のチベット統治に対する抗議行動は、過去20年間で最大の暴動に発展した。

 中国国営通信は14日、それまでの暴動で10人が死亡したと発表した。一方、チベット亡命政府側は16日、確認された死者だけで80人に上ると発表した。
 
 16日、インド北部ダラムサラ(Dharamshala)で会見したチベット亡命政府のThubten Samphel報道官は、同政府側が「現地の目撃者からの電話」で確認した犠牲者80人の身元は不明だと語った。中には少女5人も含まれているという。

 亡命中のチベット仏教の最高指導者ダライ・ラマ(Dalai Lama)14世の側近、Tenzin Taklha氏は、 犠牲者のうち26人は15日、ラサ市内のダプチ(Drapchi)刑務所の外で殺害されたようだと語った。さらに負傷者も少なくとも72人が確認されたという。

 情報は現地に残る亡命政府関係者らの親族や警備関係者らからもたらされたという。いずれも未確認のものとして四川(Sichuan)省でも3人が殺害されたとの情報や、仏僧5人が抗議自殺したとの情報も入っているという。 Taklha氏は「殺害された犠牲者の大半はチベット族のようだが、状況を確かめるのは非常に困難。遺体安置所には68体の遺体があるという情報もあるが確認のしようがない」とも述べた。(c)AFP