【2月26日 AFP】「地球最後の日」に備えて世界で最も重要な種子を保管するため北極の永久凍土層に設けられた「箱船」、「Svalbard Global Seed Vault(スバルバル世界種子貯蔵庫)」が26日、運営を開始する。

■450万種を保存可能

 この施設は気候変動、戦争その他の天災、人災から生物多様性を守ることを目的に、世界作物多様財団(Global Crop Diversity TrustGCDT)が中心となって、北極点(North Pole)からわずか1000キロに位置するノルウェー領スバルバル(Svalbard)諸島のスピッツベルゲン(Spitsbergen)島に建設した。3つの巨大な保管室を有する同施設の建設費は600万ユーロ(約9億6000万円)。現在地球上に存在するとされる種類の2倍に当たる450万種の種子を保存できる。

 開設式では、欧州委員会(European Commission)のジョゼ・マヌエル・バローゾ(Jose Manuel Barroso)委員長の立ち会いの下、ケニアの環境活動家でノーベル平和賞受賞者のワンガリ・マータイ(Wangari Maathai)氏とノルウェーのイエンス・ストルテンベルグ(Jens Stoltenberg)首相がコメ数粒を保管室に収める。

 現在、世界には20万種以上のコメや小麦が存在するが、病害虫、気候変動、人間活動などによりこの多様性は急速に減少しているという。

 GCDTによると生物多様性は、作物の環境適応性、病気への免疫力、および栄養価を高め、水質や水量に左右されない収穫を可能にするために必要不可欠だ。

■永久凍土が適温維持

 厳重な管理下に置かれたスバルバル貯蔵庫には、世界21か所の種子バンクに保管中の種子と同種の種子が保管される。追って、その他1300の種子バンクからも種子が提供される予定。施設内の温度は常にマイナス18度に保たれており、仮に冷凍システムが故障しても、永久凍土層のおかげでマイナス3.5度を上回ることは決してないという。

 運営開始日の26日に保管される種子は約26万8000種。所有権は提供した国に残り、自然環境からその植物が失われた際には所有国が種子の返還を求めることができる。

 ベルギーの約2倍の面積がありながら、人口わずか2300人のスバルバル諸島。作物が一切生育しないこの土地が、種子の保存に理想的な場所として選ばれたのは皮肉だ。(c)AFP