【2月21日 AFP】アイルランド南部にあるブラーニー城(Blarney Castle)には、キスした人は雄弁になれると言い伝えられる石「ブラーニーストーン(Blarney Stone)」がある。ところが、これまでに訪れた数百万人の観光客が、間違った石にキスしていた可能性があるとの新説が発表された。

 年間約40万人の観光客が訪れるというこのブラーニーストーンの信ぴょう性に疑問を投げかけたのは、考古学者で建築史家のマーク・サミュエル(Mark Samuel)氏とケイト・ハムリン(Kate Hamlyn)氏。2人の著書によると、現在の石は安全衛生面の理由から1888年に使い始められたもので、それ以前は2人がかりで足首を押さえてもらいぶら下がらなければブラーニーストーンにキスできなかったという。現在では、あおむけになって鉄の柵につかまればキスすることができる。

 一方、ブラーニー城側は、現在の石が魔法の力を持ったものではないとするこの説を一蹴(いっしゅう)している。

 同城のマーケティングを担当するジョン・フォガーティー(John Fogarty)氏によると、ブラーニーストーンは、スコットランド王がその上で戴冠式を行った「運命の石(Stone of Destiny)」の1部だという。

 スコットランドのロバート(Robert)王は1314年のバノックバーンの戦い(Battle of Bannockburn)でイングランドを破ったが、その際、アイルランドのマッカーシー(MacCarthy)王は4000人規模の援軍を送っていた。このお礼として、のちにスコットランドがアイルランドに贈ったものだと、フォガーティー氏は説明する。

 運命の石はその後、イングランドに奪われ、ロンドン(London)のウェストミンスター寺院(Westminster Abbey)のイングランド王の戴冠用のいすの下に据えられていたが、1996年にスコットランドのエディンバラ城(Edinburgh Castle)に返還された。

「マッカーシー王はブラーニー城の裏手にある湖で、ある女性がおぼれかけていたところを救った。その女性が、この石にキスすると雄弁になれると王に教えたのだ」とフォガーティー氏は語る。

 さらにブラーニー城側は、石にキスして雄弁になった人のリストを示し、その効力の正当性を主張している。リストには、ウィンストン・チャーチル(Winston Churchill) 元英首相からスコットランドのコメディアン、ビリー・コノリー(Billy Connolly)まで、多くの著名人の名前が掲載されている。(c)AFP