【2月20日 AFP】脳梗塞(のうこうそく)で倒れた後のリハビリで好きな音楽を聴いた場合、記憶の回復などの面で高い効果が得られるとの研究結果が20日の英医学誌オックスフォードジャーナル(Oxford Journals)に発表された。

 フィンランド・ヘルシンキ大学( Helsinki University)のTeppo Sarkamo氏は、2004年3月から2006年5月にかけて、脳梗塞患者60人を対象に調査を実施した。患者は平均年齢が60歳よりやや下で、いずれも体を動かすことが困難だったり、記憶や注意持続時間に問題があるなどの後遺症を持っていた。

 調査では患者を(1)自分で選んだ音楽を1日に少なくとも2時間聴く、(2)本の朗読を聞く、(3)何も聞かない、という3グループに分けて経過を観察した。患者に選んでもらう音楽は、患者が理解できる言語の歌詞が含まれていることを基準とした以外、ポップやクラシック、ジャズなどジャンルは問わなかった。

 脳梗塞で倒れてから3か月後、言語記憶の改善率を調べたところ、音楽を聴いたグループが60%と突出しており、何も聞かなかったグループの29%、朗読を聞いたグループの18%と比べ、大きな差が認められた。また、この結果は6か月後も変わらなかった。

 さらに、音楽を聴いたグループは、他の2つグループよりも、うつ状態になりにくかった。

 これまでも、自閉症や統合失調症、認知症などの脳の疾患における音楽療法の効能は研究されてきたが、今回の研究により、脳の疾患に音楽療法の効能があることが一層確実になった。

 この研究結果は、脳梗塞といった脳機能が損傷した患者のリハビリにおいて、音楽に治療効果があることを確認した初めてのもの。Sarkamo氏は「回復初期の患者が毎日音楽を聴くことは回復に役立つ。特に、体を動かすリハビリがまだ始められない患者にとって有効だ」とAFPに語っている。

 通常の場合、脳梗塞患者は1日の4分の3を屋内で治療を受けずに過ごすが、音楽療法の効能が立証された場合、簡便で低費用の治療法になりえることを、この研究結果は示唆している。

 ただ、すべての脳梗塞患者に音楽が有効なわけではなく、脳梗塞患者のリハビリ計画に音楽を組み込むためには、さらに大規模な調査が必要だと、Sarkamo氏は指摘した。(c)AFP