【2月14日 AFP】「今晩どう?」「今夜はいや。ロボットとどうぞ」――。恋人とのこんな会話が、SFや未来の世界ではなく今世紀中に交わされるようになるかもしれない。

 こう考えるのは、性研究と人工知能の教授で『Sex with Robots: The Evolution of Human-Robot Relations(ロボットとのセックス――人間とロボットの関係の進化)』の著者でもあるデービッド・レビー(David Levy)氏(62)。同氏は、21世紀半ばまでには「電子化された魔性の女」、つまりセックスボットが人間生活の一部として受け入れられると予測。「素晴らしいセックスが24時間週7日楽しめることを想像してみてくれ。人間はロボットに恋さえするかもしれない」と語る。

■「夢のセックスパートナー」の登場は数十年後?

 行為の後の会話までプログラムされたロボットがベッドでの満足を確実に保証するといった、レビー氏の描く未来像を、誰もがありがたがるわけではない。しかし、コンピューターの大幅な飛躍によって人間の筋肉や動きの模倣が進歩し、人工知能(AI)ソフトの進化によって感情や個性が複製できれるようになれば、あり得ない話ではないと、大半の人が考えている。

 レビー氏は、現段階ですでに、最高精度に合成された声は生身の人間の声と区別できず、人工皮膚は赤ちゃんのお尻ほど滑らかだと語る。

 早稲田大学(Waseda University)の研究者らは2007年11月、「TWENDY-ONE」というロボットを発表した。このロボットは、料理や会話をして口頭での命令にも従い、人間の活動を支援する。その手は人間のように柔らかいシリコン材に覆われており、片手全体で241点の分布型圧力センサーを備える。

 とはいえ、人間とロボットの差を判別できなくなるまでには長い時間がかかることはレビー氏も認めるところだ。米スティーヴン・スピルバーグ(Steven Spielberg)監督の2001年の作品『A.I.(Artificial Intelligence: A.I)』でジュード・ロウ(Jude Law)さんが演じたセックスロボット、ジゴロ・ジョー(Gigolo Joe)のように、セックスだけでなく会話をしたり精神的支えになったりするロボットが誕生するまでに、あと40年はかかるだろうと指摘している。

 しかし、すべての人工知能専門家がこれに同意しているわけではない。スイスのEcole Polytechnique Federaleの研究者、フレデリック・カプラン(Frederic Kaplan)氏は「その程度の期間で本当に『人間らしいロボット』ができるとは思わない」と語る。

■人はそれでも負け犬のように感じる

 ソニー(Sony)のエンターテインメントロボット、アイボ(Aibo)の頭脳をプログラムしたカプラン氏は、妄想の中で作り上げられたようなそんなロボットを、人々が本当に欲しがっているかどうかも疑問だと語る。

 一方のレビー氏は、こうしたロボットには需要があるため、どのような技術的・物理的障害があっても、それを克服するための研究資金が提供されることになるだろうとみている。

 日本のAxisはすでに世界初の初歩的な男性向けセックスボット「Honeydoll」を製造している。これはシリコンや樹脂で作られた実物大のロボットで、両胸に内蔵された発声センサーにより、乳首をつままれるとあえぎ声を出してささやくという。

 罪悪感や病気の心配のない、際限なく続くセックス。レビー氏にとって「夢」かもしれないが、それを「わびしい悪夢」と捕らえる人もいる。

 ニューヨーク(New York)を拠点とするセクソロジストのYvonne K. Fulbright氏は、「セックスボットには、相手を探す男性を中心に、すき間的な需要があるかもしれない。でも、人間がロボットに恋することは信じがたい」と言う。「セックスロボットを相手にすることには恥ずかしさがつきまとうはずだ。セックスボットが自分にとって最後の手段となったら、その人は自分を『負け犬』だと感じるだろう」

 レビー氏は「女性もセックスボットに興味があるはずだ」と指摘しているが、この点に関しては「レビー氏は的外れだ」とFulbright氏は言う。「バイブレーターが好きな女性もいるかも知れないけれど、それに恋するわけではないでしょう?」(c)AFP/Marlowe Hood