【12月6日 AFP】経済大国が地球温暖化対策の協議を重ねている間、ヒマラヤ山脈では氷河の溶解によってもたらされる壊滅的な被害が最大の懸念の1つになっている。

 ヒマラヤ山脈の氷が溶けてできる氷河湖は、人口が集中する南アジアの主要水源となっている。この地域は毎年水害で大きな被害を被っている。

 大分県別府市で開かれた「第1回アジア・太平洋水サミット(Asia-Pacific Water Summit)」に出席した登山家の野口健(Ken Noguchi)さんによると、ネパールのイムジャ(Imja)氷河湖は、1960年代には小さな水たまりのようだった。だが現在は半径1キロ、水量2900万トンになっている。決壊の危険性も指摘され、付近の住民は非常に大きな懸念を抱いているという。

 サミットにはヒマラヤ山脈にある王国、ブータンのキンザン・ドルジ(Kinzang Dorji)首相も出席。同首相は、大国が議論している間もブータンのような小国は影響を実感し続けているとし、「わが国は温暖化の原因を作っていない。にもかかわらず、氷河の溶解といった温暖化の悪影響が国内で散見される」と指摘した。

 大きな被害をもたらした1994年の氷河湖決壊以来、同国ではさまざまな予防措置を取ってきた。しかしドルジ首相は、気候変動の脅威が増している今こそ国際的な行動が必要だと語り、「そのためには国内外レベルでの効率的な意思疎通が望まれる」と訴えた。

 一方、氷河溶解の対策を進めるためのデータや行動の不足が問題だと指摘する専門家もいる。茨城県にある国連(UN)関連の水災害・リスクマネジメント国際センター(International Centre for Water Hazard and Risk ManagementICHARM)の竹内邦良(Kuniyoshi Takeuchi)センター長は、山岳地帯に監視システムがないのは大きな問題だと指摘。日本は水害早期警報の情報を他国と共有することもできるとした。

 南アジア地域では現在、毎年のように雨期になると大きな洪水被害が出ている。今年、インドでは豪雨と洪水で2200人以上が犠牲となった。

 一方で氷河の崩壊は、流域に13億人を擁する9大河川の水源枯渇につながる危機もはらんでいる。(c)AFP/Kyoko Hasegawa