【11月15日 AFP】(一部訂正)米国などの研究チームがサルのクローン胚(はい)から胚性幹細胞(ES細胞)を作成することに成功したとの研究報告が、14日の英科学誌「ネイチャー(Nature)」の電子版に発表された。霊長類のクローン胚からのES細胞作成に成功したのは世界初となる。今後、医療研究分野での使用を目的としたヒトのクローン胚作成技術への応用が期待される。

 研究を行ったのは米オレゴン健康科学大学(Oregon Health and Science University)のShoukhrat Mitalipov博士率いる研究チーム。クローン羊のドリー(Dolly)やほかのクローン動物を作ったのと同じ技術を使い、10歳のアカゲザルからクローン胚を作成し、2種類のES細胞を得ることに成功したという。

 世界初のクローン動物のドリーは1996年、体細胞核移植(SCNT)という技術によって誕生した。SCNTは、動物の成体から採取した体細胞の核を、除核した未受精卵に移植した後、化学薬品または電気ショックを与え、細胞融合を促すもの。この技術によってマウス、ブタ、ネコ、ウシ、イヌなどのクローンが作成されてきたが、霊長類に関しては、細胞発生段階で大きな障壁に直面し、成功していなかった。 

 科学者の間では、胎児が生まれる可能性のあるヒトの「生殖型クローニング」と、その可能性がなく、純粋に治療法研究のための「治療型クローニング」は区別されているが、霊長類のクローン作成については、ヒトへの応用が進むとの懸念から、倫理面で議論を呼んでいる。

 クローニングなどの生命工学を監視する英国の団体Genewatch UKのヘレン・ウォレス(Helen Wallace)氏は、今回の研究発表でクローン胎児を作る科学者も出てくることになり、一部にはそれを不安視する声も出てくるはずだとみている。

 さらに同氏は、ヒトの生殖型クローニングの実験で最も懸念されるのは奇形胎児や母親への悪影響だと指摘し、「英国では生殖型クローニングを規制する法令があるため、この技術がさほど進展するとは思わないが、法的規制がない国が大半だ」との懸念を述べた。(c)AFP/Richard Ingham