【10月24日 AFP】(一部更新)中国初の月探査衛星が24日、打ち上げられた。世界最多の人口を抱える中国が、宇宙計画においても国際的な存在感を増し始めたことで、アジア各国の宇宙進出競争が加速している。

 中国が打ち上げたのは、同国初の月探査衛星「嫦娥(じょうが)1号(Chang’e I)」。嫦娥の名は中国の仙女にちなんでいる。9月には日本も初の月周回衛星「かぐや(Kaguya)」を打ち上げ済みで、2008年にはインドも同様の計画を予定している。

 1年の期間と14億元(約215億円)を費やす嫦娥1号の月探査は、「嫦娥計画」全体の幕開けだ。同計画では2012年までに無人探査機を月面に着陸させ、2020年までに有人着陸を目指す。

 中国国営各メディアは24日、打ち上げ準備が最終段階に入ったことを大々的に報じた。早ければ同日現地時間午後6時(日本時間午後7時)にも打ち上げられる。打ち上げの様子は国営テレビで放映される予定だ。国内各紙は月探査について、2003年および2005年の有人宇宙飛行に続き、宇宙進出計画における3番目の画期的な成果になるとしている。

■月面進出、日本と中国の計画は同時進行

 今回の打ち上げの数か月前、中国月探査計画の責任者、Ouyang Ziyuan氏は人民日報(People's Daily)に「月探査はわが国の国力のすべてを表すものだ。わが国の国際的な威信と国内の結束を高める重要な出来事となる」と語った。

 国営英字紙チャイナ・デーリー(China Daily)は一面で、打ち上げが行われる中国南西部四川(Sichuan)省の西昌衛星発射センター(Xichang Satellite Launching Centre)に国内の報道陣1000人が集まっていると報じた。

 9月14日には、日本が初の月周回衛星「かぐや」を打ち上げた。日本も2020年までの月面有人着陸を目指しており、そのための重要な一段階だ。

 有人着陸までの日本と中国の計画日程はほぼ同様だが、両国は競争しているわけではないという中国高官もいる。「日本はわれわれよりもずっと早くから、月探査計画に関する調査研究を開始している。わが国は嫦娥1号の打ち上げをめぐり、誰が一番かを論じるつもりはないと常に強調してきた」と同計画の責任者Zhang Jianqi氏は述べる。

■最終目標は火星探査の基地建設

 嫦娥計画の技術者たちは、新たに開発された技術が同機の飛行中に正確に作動するかどうかを気にかけている。Zhang氏は「考えうる障害にはすべて備えている。たとえ小さな部分の不具合でも、計画全体の失敗につながるからだ。すべてが順調に進めば、11月7日までには計画の成功を発表できるだろう」と北京日報(Beijing Times)に語った。

 嫦娥1号は11月末までに最初の月面写真を送信してくる予定だ。

 欧州宇宙機関(European Space AgencyESA)のRene Oosterlinck報道官は、米国の新しい月面探査計画も含め、各国が進行中の月面進出競争で目標としているのは、最終的には火星探査の拠点とするための月面への恒久基地建設だと説明する。

 嫦娥1号が撮影するのは主に月面の3次元画像で、月面基地建設の可能性を探る判断材料となると同報道官は語る。

 中国は2003年、旧ソ連、米国に続き3番目に、楊利偉(Yang Liwei)宇宙飛行士の有人飛行に成功した。2008年後半には飛行士3人による3度目の有人飛行を予定しており、中国として初の宇宙遊泳も計画している。(c)AFP/Robert J. Saiget