【10月10日 AFP】9日にドイツで開幕した国際書籍見本市「フランクフルト・ブックフェア」2007(Frankfurt Book Fair 2007)で、スペインのベストセラー作家らが同見本市をボイコットするという事態が起きた。本年の特別招待文化をスペインの「カタルーニャ地方」としたためだ。

 スペインのカタルーニャ(Catalunya)州自治権問題のためスペインの作家らが不参加を表明したことに対し、主催者側は、「ナショナリズム、地方分権主義、虚栄心」にかかわる理由から作家らが参加しないことを残念だと、コメントしている。

 Juergen Boos実行委員長は、「カタルーニャ出身者を含む、招待されたほぼすべてのスペイン語圏の作家が参加していないのは、非常に残念なことだ。皆さんにぜひ参加していただきたい。この不参加がどんな結果を招くか心配している」と語った。

■07年ブックフェアの特別招待文化はカタルーニャ

 カタルーニャ出身の作家Quim Monzoは初日のスピーチの中で、カタルーニャ自治州の政治闘争問題により、同州のスペイン語を使用する作家たちが当初の予定ではブックフェアに参加できないはずたったことを、軽妙に批判した。前年の段階では、同ブックフェアに参加できるのはカタルーニャ語を使用する作家だけだと言われていたが、6月になって全員が招待されたのだ。

 Monzoは、『O'Clock』『Self-Service』などの著者であり、アーネスト・ヘミングウェイ(Ernest Hemingway)やトルーマン・カポーティ(Truman Capote)の作品を翻訳している。「言語と文学は、地政学的な策略の的になってはならないが、現実は大きな形でそうなっている」と、同氏は語っている。さらに「今回の見本市が国でなく、一地域をテーマとしたことに驚いている。つまり、様々な民族国家の間で分裂し、その民族国家のどの言語も公用語ではない文化を招待することが決定されていたのだ」と付け加えた。カタルーニャ語は、フランコ総統(Francisco Franco)の独裁政治のもとで禁止されたが、現在では1300万人が使用している。

■地政学的な策略の的になった言語と文学

 同氏によると、カタルーニャはその歴史を通して政治の犠牲となり、その文学は自らに値する評価を得ようと闘ってきたのだという。「長い間、歴史はカタルーニャ文学の味方ではなかったし、政策は我々にとって喜ばしいものではなかったが、カタルーニャ文学は確かに欧州文化の礎のひとつだ」

 フランクフルト・ブックフェアにまで影響を及ぼしたこの問題は、2008年の選挙を前に、カタルーニャとバスク(Basque)地方で高まる緊張状態を背景としている。カタルーニャ自治州では一部の住民がスペインからの独立を求めているが、左派の分離独立主義者たちは今週、国王フアン・カルロス1世(Juan Carlos)の写真に火を付けるという抗議活動を行った。

 この闘争が文化と結びつくほど大きくなっていることが、前週報道されたある事件でも明らかになった。『The Ship of Fools』などの小説で有名な作家クリスティーナ・ペリ・ロッシ(Cristina Peri Rossi)がラジオ番組でスペイン語を話したことが理由で、解雇されたのだ。

  今年で59回目を迎える同ブックフェアは同ブックフェアは世界で最大数の出版契約取引が行われるとされており、毎年約30万人が来場する。今年は14日まで開催されている。(c)AFP/Emsie Ferreira