【10月5日 AFP】米ソフトウエア大手マイクロソフト(Microsoft)は4日、個人がオンライン上で医療情報を管理できる無料サービス「ヘルス・ボールト(HealthVault)」を開始した。インターネット検索大手グーグル(Google)も独自の医療情報サービスに進出する動きを見せている。

 守秘義務のある医療情報をウェブ対応型データベースに載せた場合の安全性について、個々の利用者の判断が問われることになりそうだ。

■プライバシー保護の監査は「最高水準」とマイクロソフト

「HealthVault」の利用者は、血液検査や予防接種、病歴などをウェブ上のデータベースに蓄積し、限られた医療機関に対して情報を開示することができる。データの転送にはデータ名義人の許可が必要となるほか、広告スポンサーの個人情報閲覧は禁じられている。

 マイクロソフトによると、サイトの個人情報保護については外部の独立監査法人PatientPrivacyRights.Orgが監査にあたる。同法人の創立者デボラ・ピール(Deborah Peel)博士は、「監査の実施は絶対条件だ。テクノロジー企業は今後、『お任せください』の一言では顧客の信用を得られないだろう。ユーザーは健康情報を誰に預けるか、自分の判断で決めるべきだ」と述べた。同博士によると、マイクロソフト社のサービスの監査は「今までにない高い水準」で行われたという。

■グーグルも健康分野に進出

 一方グーグルは、遺伝情報サービスを提供するバイオ技術企業、23andMeに390万ドルを投資。また、医師や研究員などの専門家による健康相談機関も設立した。将来的には、個人の既往歴や健康状態を記録し、ニーズに応じて最新の健康情報を検索できるサービスの開発を目指す。

 最近業界内のブログに流出した「Google Health」試験版の画像では、「プロフィール」のボタンをクリックすると既往症や健康状態、服用した薬品、アレルギーや家族の病歴を記載できるようになっている。

■普及する医療情報のデータ化、懸念の声も

 現在、米国ではカルテをデータ化している国民は2割にとどまるが、医療情報のデータ化サービスは確実に普及しつつあり、政府もこれを奨励している。世論調査会社ハリスインタラクティブ(Harris Interactive)の調査によると、米国人が医療情報を求めてインターネットを使用した率は過去1年で37%増え、回数は月平均6回に上っているという。

 しかしその反面、個人の医療情報を大手企業に預ける動きに懐疑的な見方もある。

 消費者団体Center for Digital DemocracyJeffrey Chester会長は、「グーグルやマイクロソフトがやっていることは、『デジタル化』の名でごまかした壮大なマーケティング計画にすぎない。個人情報の売買を行う企業に、自ら個人情報を渡すのはいかがなものか」と懸念をあらわにした。(c)AFP/Glenn Chapman