【9月28日 AFP】(9月29日写真追加)シベリアで発掘された5万年前のマンモス13頭の毛から抽出したDNAの解読に成功したと、米国とデンマークの大学の研究チームが28日付の米科学誌「サイエンス(Science)」に発表した。研究チームでは毛のDNA解析する方法が、絶滅種の研究に幅広く役立つものと期待している。

 米ペンシルベニア州立大学(University of Pennsylvania)とコペンハーゲン大学(University of Copenhagen)の研究チームは、シベリアで発掘され世界各国の博物館で保管されているマンモス13頭の毛幹から、細胞小器官ミトコンドリアのDNAを抽出し、塩基配列の解析に成功した。

 従来の研究では、絶滅種の遺伝子情報を調べるには、骨からDNAを抽出する方法に頼ってきた。しかし、この方法ではサンプルの細胞を採取するために骨に穴を開けねばならず、大きな損傷を与えかねない。その上、古い骨は、数世紀にわたってバクテリアに汚染されていることも多いため、DNA解析の結果が影響を受ける恐れもある。

 一方、毛のケラチンに含まれるDNAは、多くの場合もとのままの状態で保存されている。しかも毛のサンプルを洗浄しても遺伝子の構造は変わらないという。

 さらに「2世紀にわたって室温で保管されてきた標本からDNAを抽出できるという発見により、世界各地の博物館に保管されている大量のコレクションがゲノム解析調査の対象になる」という。

 研究チームでは「合成による配列解読(sequencing-by-synthesis)」というDNA解読技術を使い、1779年にシベリアの永久凍土から発掘された有名なアダムス(Adams)マンモスなど13頭のマンモスのミトコンドリアのゲノムの塩基配列を解析した。

 アダムスマンモスはこれまでに発掘されたマンモスのなかで最も完全だとされているが、ロシアのサンクトペテルブルク(Saint Petersburg)の博物館で200年間にわたり室温で保管されてきた。

 動物の毛はさまざまな自然環境のなかでも長期間にわたってそれほど変化せずに残るうえ、博物館などの学術機関には現存する動物や絶滅した動物の毛が大量に収集されていることから、研究チームは、毛幹は有望なDNAの抽出源として今後の研究に大きな可能性を開くと期待している。

 「チャールズ・ダーウィン(Charles Darwin)、アレクサンダー・フォン・フンボルト(Alexander von Humboldt)、カール・フォン・リンネ(Carl von Linne)のコレクションに、遺伝子情報が付け加えられるかもしれない」と研究チームは述べている。

 研究チームでは、これまでに収集したデータと合わせて、マンモスのDNA配列全体を明らかにできると期待している。また絶滅種の一部について、どのように、そしてなぜ絶滅したのか突き止める研究への応用も可能と見られている。(c)AFP