【9月23日 AFP】イングランド・プレミアリーグ、チェルシー(Chelsea)のアブラム・グラント(Avram Grant)新監督は、自分がロマン・アブラモビッチ(Roman Abramovich)オーナーの引き立て役ではなく、ジョゼ・モウリーニョ(Jose Mourinho)前監督の突然の退団に何も関係していないと主張した。

 アブラモビッチ氏の横柄とも言える態度がモウリーニョ前監督の退団の理由の一つとされる中、グラント新監督はアブラモビッチ氏の干渉無くチームを率いることが出来るだろうと確信をしている。アブラモビッチオーナーと親交が深いグラント新監督は、2007-2008年シーズン開幕前にチェルシーのスポーツ・ディレクターに就任し、このことはアブラモビッチ氏が更にチームへ干渉しやすくするためと受け取られていた。

 アブラモビッチ氏とモウリーニョ前監督は2007年の1月から衝突を繰り返していたが、グラント新監督は私的な関係によって新たな仕事を手に入れた訳ではなく、ましてや自分のキャリアアップの為にモウリーニョ前監督に背くようなことをしたことなはいと強調した。

 グラント新監督は「チーム編成はロマンの望み通りになるものでなく、私の判断でチームの良し悪しも変わると言うことです。ロマンにはサッカー界において多くの友人がいますが、その内の誰かを(監督に)指名することは無いようです。2人の間で何かを分け合うと言うのは、相手がロマンであっても普通の人間関係でしょう。以前からの私が分かるなら、サッカーにおける私の判断と言うものが私自身の判断であると分かるであろう。負ければ非難されるであろうし、勝てば私も成功の一端を担ったことになる、だから自分の判断に基づいていくのです。もちろん、オーナーは監督を選ぶことができます。もし私がタイに居たら、オーナーは「来てくれ」と言えますし。私は監督業とは全く違う事をしていましたから、監督に就任することは難しかった。ここ2か月間はジョゼとは良い関係でしたよ。お互い自分自身の仕事をしっかり行っていましたし、何もかもを分け合っていました。こんなことを考えるのは野暮でしょうが、ジョゼの退団に対してのファンの対応に本当に胸が熱くなって感動しました。クラブに多くをもたらした者に対するサポートを目にすることが出来るのは素晴らしいです。ですから、私は今後もサポーターが納得させられるように全力を尽くすことを約束します。」とチームの本拠地のスタンフォード・ブリッジ(Stamford Bridge stadium)で開かれた会見で語った。

 モウリーニョ前監督は就任期間の約3年でチェルシーに前例の無い栄光をもたらしたが、アブラモビッチ氏が愛するゲームの中の様なサッカーをする要求には対応し切れなかったのが、退団の一つの理由だったと考えられる。グラント新監督はエンターテイメント性と共に勝利を挙げることを重点に置くと繰り返し強調しながらも、モウリーニョ前監督が就任時に自分を「特別な存在」と語ったのに対し、謙遜した様子を見せ、「私は普通の人間です。私自身の哲学を持っています。ここに積み上げられたものに敬意を払うと共に、今後敬意を払われるようなものをして行きたい。サッカーというのはエンターテイメントでもありますから、優勝を賭けて試合をこなすと共にどのように勝つかというのも大切なことだと考えています。積極的で価値あるサッカーをするということです。ただ、それがチェルシーに今までなかったという意味ではありません、これからのことを話しているだけです。エンターテイメント性と結果は併せ持つことは出来ると思います。全ての試合に勝利するのは出来ないかもしれませんが、積極的に行けることを信じています。短期間でチームに作り上げて、理念を埋め込むことは出来ないでしょうが、時間をかけてたとしてもそこまで長くならないと信じています。不安を抱かれるのは分かります。」と語った。

 フランク・ランパード(Frank Lampard)やディディエ・ドログバ(Didier Drogba)らチェルシーの選手たちの一部からはモウリーニョ前監督の退団でチーム大きな打撃を与えると発言しているが、ロッカールーム内で起こりうる反発も見据え、グラント氏はすぐさまその主張に反論した。「ジョゼと選手たちが良い関係を築けていなかったというのなら、なおさらショックなことです。約3年半でリーグやカップに優勝したんです。私が必要としているのは未来を見据えること、特にすぐ先の未来を見据えるのが大事なのです。この2日間で始めたばかりですが、選手たちとは良い関係を築けると考えています」と、不安な先行きにも前向きな姿勢を見せた。(c)AFP/Steve Griffiths