【8月30日 AFP】米国の対イスラエル外交・軍事支援が米国益に適うものかどうかに疑問を呈す内容の書籍が、9月4日に出版される。これまでタブー視されてきた問題も取り上げており、中東地域で米国が果たす役割をめぐって、議論が高まることが予想される。

 「The Israel Lobby and US Foreign Policy(イスラエルのロビー活動と米外交政策)」と題したこの本は、シカゴ大学(University of Chicago)のジョン・ミアシャイマー(John Mearsheimer)教授とハーバード(Harvard)大学のステファン・ウォルト(Stephen Walt)教授の共同著作。

 米国でも有数の政治学者である2人は、同じテーマで昨年発表した論文で、米国がイスラエルを支持する理由は、戦略的、倫理的な背景からでは十分に説明することができないと指摘。むしろ、在米ユダヤ人団体のロビー活動や、これに共鳴するキリスト教原理主義者、新保守主義者らの圧力によるとみるべきだと主張し、議論を巻き起こした。

 今回出版される本でも、こうした「無条件のイスラエル支持政策」を長年続けてきたことが、中東地域における米国の外交政策のバランスを欠く結果を招き、イラク戦争や、イラン・シリア両国との関係緊張化、欧米諸国の安全保障面での脆弱(ぜいじゃく)化などにつながったと主張。

「イスラエルには、多くが主張するような米国にとっての戦略的価値はない。冷戦時代にはあったかもしれないが、冷戦後においては負債としての側面が大きくなりつつある」「イスラエルの厳しいパレスチナ政策を無条件に支持してきたことによって、世界中で反米主義が高まり、テロの懸念も増した。欧州、中東、アジアの重要な同盟国との関係にも亀裂をもたらした」などと述べている。

 この本について、米ユダヤ人団体「名誉毀損防止同盟(Anti-Defamation League)」の最高責任者、アブラハム・フォックスマン(Abraham Foxman)氏は、「アラブ-イスラエル間の紛争や米国内のイスラエル支持者の役割について、陰湿で偏った視点に基づいて記述している」と酷評。対抗して同日付で、「The Deadliest Lies: The Israel Lobby and the Myth of Jewish Control(史上最悪のウソ:イスラエルのロビー活動とユダヤ人支配説について)」と題した自著を出版する予定だ。(c)AFP/Luis Torres de la Llosa