【8月15日 AFP】中東歴訪中の麻生太郎(Taro Aso)外相は15日、パレスチナ自治政府のあるヨルダン川西岸(West Bank)ラマラ(Ramallah)でサラム・ファイヤド(Salam Fayyad)自治政府首相と会見し、パレスチナ自治政府への直接援助を再開する協定に調印した。

■直接援助に1130万ドル

 麻生外相の中東歴訪は、経済的側面からの中東和平プロセス促進が目的とされ、西側の支持を受けたマフムード・アッバス(Mahmud Abbas)議長率いる自治政府に対し、数百万ドル規模の資金援助を予定している。

 パレスチナ高官はAFPに対し「今回の協定により、パレスチナ自治政府予算として日本から1130万ドル(約14億円)の直接援助がもたらされ、農業プロジェクトなど経済分野の支援に充てられる」と述べた。また人道支援としてさらに800万ドル(約9億5000万円)が提供される予定だという。世界第2の経済大国である日本は中東に対する主要援助国の一つ。

 日本政府は、2006年1月のパレスチナ総選挙で、西側がテロ組織とみなすイスラム原理主義組織ハマス(Hamas)が圧勝して与党となって以降、パレスチナに対する直接援助を停止していた。

■「平和と繁栄の回廊構想」

 麻生外相とファイヤド首相は同日夜、イスラエルのツィピ・リブニ(Tzipi Livni)外相とヨルダンのアブドル・イラハ・ハティーブ(Abdul Ilah Khatib)外相を交え、西岸のエリコ(Jericho)で4者会談を行い、小泉前首相が前年の中東訪問時に西岸への農業団地建設などを提案した「平和と繁栄の回廊構想」について協議する予定。

 麻生外相は前日、最初の訪問国ヨルダンで記者会見し、アラブ諸国およびイスラエルの双方から信頼を得ている日本は、中東問題の唯一の解決方法が、パレスチナ人とユダヤ国家間の平和の確立および共存だということを理解していると述べた。

 また「平和と繁栄の回廊」構想については、パレスチナの雇用創出や経済発展、イスラエルとの間の信頼醸成につながり、和平プロセスの当事者間の友好を確立する助けになると強調。パレスチナ国家建設のためにはまず、経済的な自立が必要で、この経済的活力のための手段として、同構想を提案したと語った。

■パレスチナ人移動制限の解除を要請

 一方、麻生外相は14日、エルサレム(Jerusalem)でイスラエル高官らとも会談した。リブニ外相との対談では、2000年の第2次インティファーダ以降、イスラエルが占領する西岸地区内でパレスチナ人に課している厳しい移動の制限を緩和するよう、イスラエル側に促した。「(リブニ外相に)平和のための努力を継続するよう要請し、特に西岸内の道路封鎖を減らして、不法な入植地を解体するよう忠言した」という。

 日本政府は国際社会における役割の拡大を目指し、中東和平での存在感を強めようとしている。(c)AFP/Hossam Ezzedine