【8月12日 AFP】カナダ政府は10日、同国北部の北極海域に軍事施設を建設すると発表した。北極海の北西航路(Northwest Passage)、および海底に埋蔵されているとみられる石油や天然ガスをめぐる領土権争いで領土権を改めて主張する方針だ。

 スティーブン・ハーパー(Stephen Harper)首相は声明を発表し、北極圏の巡視船補給のために、同国北部のバフィン島(Baffin Island)にある元鉱山都市のNanisivikの施設を修復すると述べた。また、北西航路上のレゾリュート湾(Resolute Bay)にも、カナダ軍の基地が建設される。

 ハーパー首相は「北極圏における主権の原則は、利用しなければ失うということだ」と述べ、新施設の建設によって「カナダが北極圏で長期にわたって活動する意義を、世界に明確に伝える」と語った。

 同首相は3日間の日程で、バフィン島南端で実施された「北におけるカナダの主権を強く主張することを目的とした」大規模な軍事演習を視察、その最終日に今回の声明を発表した。

 大西洋から北極海沿いのカナダ群島地帯を抜け太平洋に至る「北西航路」は、地球温暖化による海水温度の上昇で2050年までには通年航行が可能になると見られており、カナダのほかに米国、ロシア、デンマーク、ノルウェーが領有権を主張している。

 カナダ軍は1898年のゴールドラッシュの頃より北極海域での活動を行っているが、近代的な軍の駐留は、ノースウェスト準州(Northwest Territories)のイエローナイフ(Yellowknife)で1970年に開始されたばかり。

 現在は、200人弱の兵士と1500人の先住民の非常勤警備員が、400万平方キロメートルのカナダ領域を守るために常駐している。(c)AFP/Michel Comte