【8月5日 AFP】ここ10年来で最も大気が澄んでいる香港で、なぜ青空の日が増えたのかが論議になっている。

 今年に入り、香港の大気汚染は劇的に改善した。政府統計によると、5月から6月にかけ大気の汚染度が低いと判定された日は、2006年に比べて70%も増え、空気の質は1999年以来最も良好とされる。

 香港特別行政区当局は、大気汚染削減のために政府が取ってきた対策が功を奏し始めたためと宣伝している。

 実際、特別行政区の徹底した大気汚染対策に対しては、海外からの投資と観光客の誘致に支障が出ると、香港財界から不満が出たほど。

 ディーゼル燃料で走るタクシーとミニバスは、排気の汚染が少ないLPガスの車両に取って替わられ、発電所の排ガス規制も強化された。

 しかし環境保護派によれば、香港当局の目標値は、世界保健機関(WHO)の設定した大気汚染の危険水準よりもかなり高めに設定されており、汚染が緩和されたとする数値をそのまま鵜呑みにすることはできないという。香港政府がスモッグを解消したと主張するのは時期尚早との見方だ。

 香港当局は、香港の大気汚染の最大の原因は、隣接する中国本土南部の珠江デルタ(Pearl River Delta)地区にある工場の排ガスにあると指摘する。もっともその工場の多くは香港企業が所有している。

 これに対し、香港の環境保護派は、香港の自動車や海上交通手段、発電所から出る排ガスが大気汚染の原因だと見ている。

 香港科技大学(Hong Kong University of Science and Technology)の大気学者、Alexis Lau氏は、大気汚染が改善した理由として、風の流れが北方向に安定していて中国からの汚染された大気の流入を妨げていることと、この時期に多いはずの台風が少ないため空気が滞留しないことを挙げている。香港の空は一般的に、冬よりも夏の方が浄化される。南からの海洋気流がきれいな空気を運んできて、汚染物質を吹き飛ばしてくれるため。

 一方、きれいになったとされる香港の空とは対照的に、中国本土では大気を覆う厚いスモッグのために最近は視界が数百メートルまで狭まっている。北京は今年6月、過去7年で最悪の大気汚染に見舞われた。住民の多くは「物心ついて以来最悪の汚染」と語る。毎日1200台ずつ増え続ける自動車は、大気汚染悪化の第1の原因と指摘されており、有害ガスを排出する工場を政府が強制的に閉鎖する政策も、十分な成果を上げていない。

 香港の曾蔭権(ソウ・インケン、Donald Tsang)行政長官は公害対策を最優先課題の1つに掲げている。Lau氏も、香港で青空の見える日がさらに増えることを期待すると語った。(c)AFP/Stephanie Wong