【7月17日 AFP】「初期の人類にとって直立2足歩行は4足歩行よりずっと効率的だった」とする研究結果が、16日発行の米科学アカデミー紀要(Proceedings of the National Academy of SciencesPNAS)に掲載された。

 なぜ人類がほかの大半の霊長類と違って2本足で歩くのかを説明する「Chimpanzee locomotor energetics and the origin of human bipedalism(チンパンジーの運動エネルギー論と人類の2足歩行の起源)」と題するこの研究を行ったのは、アリゾナ大学(The University of Arizona)人類学科のDavid Raichlen助教授率いる研究チームだ。

 研究では、「人類が2足歩行に進化したのは、2足歩行のほうが4足歩行よりも少ないエネルギーで済むからだ」との仮説を立てて調査を進めている。

 Raichlen助教授は、「研究者の間でエネルギー論の役割と2足歩行への進化について論じられ始めて、はや数十年になる」と語る。

■人間とチンパンジーの2足歩行を比較

 研究では、霊長類の歩き方をシミュレーションするために、「2足歩行モデリング」という手法を用いたという。モデリングでは、4人の成人と、2足歩行の訓練を受けた5匹のチンパンジーがウオーキングマシンを歩く様子を研究した。

 この調査により、人間が2足歩行時に必要とするエネルギーは、チンパンジーが4足歩行時に必要とするエネルギーの4分の1に過ぎないことが分かった。

 また、チンパンジーの場合は2足歩行でも4足歩行でも必要なエネルギー量はほぼ同程度だったが、これは種により差があるという。チンパンジーのように歩幅の広い種の方が、歩幅の狭い種よりも効率的に直立2足歩行を行えるのだ。

 Raichlen助教授は、「研究により、チンパンジーの歩行に要するエネルギー量と、その生体構造を関連づけることができた。2足歩行時のエネルギー効率の個体差は、歩幅の差から生じていると言える」と語った。

 2足歩行は、人類とその他霊長類との進化上の決定的な相違だ。初期の人類は、エネルギーを節約できる2足歩行に移行したことにより、食糧を一層容易に調達できるようになり、これが人類の進化に有利に働いたのである。(c)AFP