【6月23日 AFP】ライオン「シンバ」の成長を描き数々の賞を獲得したディズニーのミュージカル「ライオンキングLion King」が10年目を迎えて初めて、物語の舞台となった南アフリカで公演を行っている。

 ヨハネスブルク(Johannesburg)にあるTeatro de Montecasinoでの「ライオンキング」アフリカ公演は、出演者はすべて南アフリカ人。1900席ある同劇場は、初日の6月6日から連日満員が続いている。

 シドニーや上海でも年を取ったヒヒの呪術師「ラフィキ」を演じてきたズールー族のBuyisile Zamaさん(29)は、「友だちや家族がやっとわたしの舞台を見てくれる」と興奮している。
「どこでも喜んでくれたが、ここでは観客は単語1つ1つまですべて理解できるだろう。わたしたちの文化なのだから」

 南アフリカを舞台にしたミュージカルでありながらこれまで経費の問題で南アフリカ公演がかなわなかったが、ついにスポンサーや協力者が現れ、実現に至った。

 ミュージカルの基にもなった同名の映画は、1994年にアカデミー賞を受賞しているが、そこで作曲を担当したのがLebo Mさん。ヨハネスブルク郊外のソエトに住み、同地で歌手を養成する慈善団体を運営している。

「10年間、このミュージカルを南アフリカで上演するのがわたしの夢だった」とLebo Mさん。ここでの公演は、ロンドンやパリと同じような単なるショーではなく、地元の才能を披露する場なのだという。Lebo Mさんは、この公演がこの地の商業演劇の足掛かりとなることを希望しており、「この成功を利用してまた新しい作品を制作するべきだ」と考えている。

 曲の半分はエルトン・ジョン(Elton John)とティム・ライス(Tim Rice)の手によるが、人気のバラード「The Lion Sleeps Tonight」を作曲したのは、1962年に極貧のうちに亡くなった南アフリカの作曲家Solomon Lindaさんだった。ディズニーはアフリカでの上演を記念した特別演出として、この曲を初めてズールー族のコーラスを入れて演奏する。

 そのほかにも、伝統的な仮面、地元のビーズ細工や布を使った衣装、観客を見下ろす5.4メートルの高さのキリンなど、アフリカの雰囲気あふれる舞台となっている。

 制作監督のAubrey Linchさんは「よそでの上演には4、5人の南アフリカ人が出演していたが、ここでは全員が南アフリカ人だ」とその違いを強調する。Linchさん自身「ミシガン生まれのアフリカ系アメリカ人」として、世界中で公演を重ねた後に南アフリカで公演できるのは魔法のようなことだという。「正統的でなければならないため、それぞれの登場人物を南アフリカの現実に適合させた」と語る。

 劇評はおおむね好意的だ。ウェブ版の「Variety」誌は今週、前売りが好調のため、公演期間が当初の8月中旬から10月初めまで延長されたと伝えた。

 チケット代の21-63ドル(約2600-7800円)は、多くの現地の人々に取って手の届かない値段だが、電話会社Telkomが4万枚のチケットを買い上げて学生やヨハネスブルグ周辺住民に配った。

 Zamaさんにとって地元での上演はプレッシャーでもある。特に、歌に登場する方言が難しいという。「問題はわたしがこの国の11の言語を知らないということ。言葉を正確に発音できているかが心配だ。その民族の人はその文化を知っているから、わたしたちもすべて正確にしなければならない」と打ち明ける。

 この作品のプレミアには、自身が後援するヨハネスブルク付近のタレント学校の生徒を連れて登場したトークショーの司会者オプラ・ウィンフリー(Oprah Winfrey)など大勢の有名人が姿を見せた。それも含めて、いまだに公演が続いているブロードウェーではトニー賞6つを受賞しているミュージカル「ライオンキング」は、疑いなく南アフリカではぜいたくな舞台作品の1つだ。

 ディズニーとSolomon Lindaさんの遺族は昨年ようやく契約締結にこぎつけたが、その価格は明らかにされていない。Lindaさんの子どもたちは公演に招待されており、期間中に観劇に訪れる予定だという。同家の弁護士によると「彼らは作品が南アフリカで上演されることに大変喜んでいる。また、父親がとうとう評価を獲得したことに非常に興奮している」という。

 ミュージカル「ライオンキング」は1997年のブロードウェーでの幕開け以来、これまで全世界で3500万人が観劇した。(c)AFP/Florence Panoussian