【6月13日 AFP】『殯(もがり)の森(Mogari No Mori)』で5月、第60回カンヌ国際映画祭(60th Cannes Film Festival)審査員特別グランプリ(Le Grand Prix)を受賞した河瀬直美(Naomi Kawase)監督が11日、日本のインディペンデント映画が、国内の映画ファンを獲得するためには、大手配給会社とは異なるファッショナブルなイメージ作りが必要だと述べた。海外での、より幅広い観客の獲得に努力せねばならないとも語った。

■イメージ戦略とメディアの協力

 邦画は洋画に比べて、興行成績の伸びを見せているが、多くはテレビドラマやアニメーション、ホラー映画がもとになったものだと、河瀬監督は記者に語った。
 「この状況を変えるためにしなければならないのは、一般の人々の意識を変えること。そのために、脚本をファッショナブルに見せる必要がある」
 インディペンデント映画普及のためには、メディアの協力が一層必要だとも語った。
 「もしメディアがより多様な方法で、脚本や映画を大きく取り上げ、特集を組んだならば、これまでの映画ファンのイメージを大きく変えるだろう」と加えた。

■人生の試練を描く、カンヌ・グランプリ受賞作

 歴史ある奈良を舞台にした『殯(もがり)の森』は、老いた認知症の男性と女性介護士を軸に、後悔、死の克服といった人生の試練を描く。妻、子どもという愛する存在を失った2人は、共に森に入り込んでしまう。森で迷う2日間の中で、喪失から立ち直り、生きることへの願望を再び見つける。
 38歳になる河瀬は同作品を、観客に対して要求の多い映画だとし、観客に対して、「細かいところまで注目し、のめり込むように」作品を深く感じてほしいという。

■映画産業への希望

 『萌の朱雀(The God Suzaku)』で10年前、カンヌ国際映画祭で新人監督賞にあたる「カメラ・ドール(Camera d’Or)」を受賞した河瀬監督は政府に対し、インディペンデント映画普及のために、映画産業により密接に協力するよう働きかけている。
 「わたしが心の底から望んでいるのは、新作映画を気軽に見に行けるようなシステムを、日本の映画産業に作ること。日本映画が、組織的な配給方法で海外へ配給されるようになることも望んでいる」(c)AFP