【5月28日 AFP】第60回カンヌ国際映画祭(60th Cannes Film Festival)最終日の27日、閉会式に際して各賞の授賞式が行われた。審査員特別グランプリ(Le Grand Prix)には、河瀬直美Naomi Kawase)監督の『殯(もがり)の森Mogari No Mori)』が選ばれた。

■人にとっての「支え」とは

 同作品では、悲劇によって大切なものを失った人々が穏やかに、そして力強く生きる様子を描いている。

 5月30日に、38歳の誕生日を迎える河瀬直美監督は、人生の試練や感化の源を描いた作品を作りたかったと語った。

 「人生には、さまざまな困難があり、苦しみや迷いの根源となるものが沢山ある。そんな時、私たちにとってかけがえのないものは、お金や車や服などではなく、目の前にいる人や力を貸してくれる人だ。支えを見つけられた時、人は自分の足で人生を歩んでいくことができる。」

■困難を乗り越え、前に進む人間の姿を描く

 同作品は、奈良市外のとある老人ホームで暮らす認知症の男しげき(うだしげき)と新任の女性介護士、真千子(尾野真千子)の物語。

 主役を演じるのは、うだ しげき。妻を亡くした悲しみに暮れながらも、楽しかった頃の思い出に浸り、日々悲しみと喜びが混在した感情に苛まれる中年の男性だ。

 我が子を亡くした悲しみを抱える真千子はしげきの友人。老人ホームの裏にある森を通り抜け、ドライブに行こうとしげきを誘う。

 しかし、ドライブの途中で車が脱輪し、しげきは深い森へ逃走してしまう。真千子もその後を追いかけ、2日後に2人は明かりの差す静かな場所にたどり着いていた。地面刺さった杭に刻まれているように、そこはしげきの妻が眠る墓だった。

 真千子は、亡くなった妻へ向けた手紙をしげきが30年間に渡って書き続けていることを知る。真千子は、しげきが妻へ最後の別れを伝える旅に手を貸すことで、自身の心の中に平穏を見出していく。(c)AFP

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