【4月25日 AFP】サッカー史にその名を刻み、クライフ語録(Cruyffian)と呼ばれる独自の理論を展開することでも知られる元オランダ代表のヨハン・クライフ(Johan Cruyff)氏が、今年の誕生日で還暦を迎える。

 クライフ語録とは「偶然の一致とは論理的なもの」や「理解できるまで分からない」等、クライフ氏が残したコメントの総称で、現役引退後も同氏が母国で驚異的な人気を博している要因でもある。

 1947年4月25日には、クライフ語録がオランダの「Dutch Onze Taal」(「私達の母国語」)誌に特集を組まれており、言語学者は「クライフ氏は、以前ピッチで繰り広げたプレーの様に言葉を操る」と記している。

 欧州年間最優秀選手(バロンドール)の栄冠に3度(1971年、1973年、1974年)輝き、20世紀最高の欧州サッカー選手と称されるクライフ氏は、その名声とは他に、独特な世界観で試合に関する洞察力に満ちた意見をいとも簡単に発する「サッカーの賢人」と呼ばれている。

 クライフ氏の「イタリアが勝つ事は無いが、イタリアに負けることはある」という発言など、視点が少しずれた言い回しを母国オランダの人々は好意的にとらえており、前述の言語学者は「どれも明らかな事であったり、無意味なような事であったりするため、どこか奇妙に思えるが、矛盾をはらんだより深い洞察からなる名言」と語る。

 1970年代、クライフ氏はオランダ代表および所属していたクラブチームのアヤックス(Ajax)において、トータルフットボールと呼ばれる新たな戦術の旗手としてサッカー界に革命をもたらし、エールディビジ優勝8回、ヨーロッパチャンピオンズカップ(European Cup)優勝3回を成し遂げた。

 1974年のW杯西ドイツ大会では、地元・西ドイツに敗れたもの、オランダ代表チームを初の決勝に導いている。その後はスペインのFCバルセロナ(FC Barcelona)に移籍し、さらなる成功を積み重ね、地元サポーターに救世主(エル・サルバドル)と崇められた。

 クライフ氏は、常に知的であり、意志の強い選手で、現役時代からチームメイトにアドバイスしていたという。

 現役引退後は、指導者に必要なライセンスを所持していないにも関わらずアヤックスの監督に就任し、その後オランダサッカー協会(KNVB:Koninklijke Nederlandse Voetbal Bond)が、履修が必要な科目をすべて修了していないクライフ氏に仕方なく資格を与えたということもある。

 アヤックスとバルセロナで指揮を執ったあとは、オランダの国営放送の解説者に就任し、クライフ氏のキャッチフレーズとされる「どんな不都合にも、利点はある」などのクライフ語録で人気を博している。

 オランダの通信社ANPは、クライフ氏の還暦を記念してクライフ語録の人気投票を実施し、「ボールをキープしていれば、相手はゴールできない」と「相手が何点取ろうと、それより多く取れば良い」の2つの名言に人気が集まったという。

 さらにANPは投票した1200人の内、25%の人々がクライフ氏の発言を「理解している」と答え、53%の人々が「時々分からないこともあるが、気にしない」と答えたとしている。(c)AFP