【ロンドン/英国 25日 AFP】コミックや映画のヒーロー「スーパーマン(Superman)」の物語で、重要な役割を持つ架空の物質「クリプトナイト(Kryptonite)」と酷似する成分を持つ鉱物が発見された。「スーパーマン」ストーリーでは、クリプトナイトは無敵のスーパーマンのパワーを奪う唯一の物質だ。 

■スーパーマンのパワーを奪う物質との違いは「フッ素」だけ

 2006年の映画作品「Superman Returns」ではスーパーマンの宿敵、レックス・ルーサー(Lex Luthor)が架空の「Metropolis Museum」からクリプトナイトの破片を盗み出す。この場面に登場する展示ケースに「ナトリウム・リチウム・ホウ素・珪酸塩・水酸化フッ素」と記されていた。

 ロンドンの自然史博物館(Natural History Museum)の鉱物学者、クリス・スタンレー(Chris Stanley)氏は、新発見の鉱物化学式「ナトリウム・リチウム・ホウ素・珪酸塩・水酸化物」をインターネットの検索をしていて、酷似する組成成分が「スーパーマン」に登場していることを知って、仰天したという。

 現在、自然史博物館に保管されているこの白い粉状の鉱物は、発見場所のセルビアの地方にちなんで「ジャダライト(Jadarite)」と名付けられている。スタンレー氏は、「ジャダライトはフッ素を含まず、緑色というよりむしろ白色だが、その他の成分ではクリプトナイトそのもの」だという。

■組成成分を厳密に調査した学者もビックリする「酷似」

 この鉱物は、鉱山会社リオ・ティント(Rio Tinto)の地質学者によりセルビアで発見され、これまでに確認された物質とは異なるため自然史博物館に照会があった。

 世界では毎年30種類から40種類の新たな鉱物が発見されるが、それが新物質と認定されるためには結晶構造も含めた化学成分が厳密に吟味される。

 スタンレー氏は、カナダ国立研究機構(National Research Council of Canada、NRC)の研究者、イボン・ル・ペイジ(Yvon Le Page)氏に最新鋭のエックス線装置を使った調査を依頼し、新物質であることが確認された。

 分析に当たったペイジ氏も英プレス・アソシエーション(Press association)通信社に、「架空の物質『クリプトナイト』と組成成分が一致する鉱物を発見するなんて、一生に一度あるかないかの偶然だ」と驚きを語ったという。

 ジャダライトは今年度後半に、雑誌European Journal of Mineralogyで正式に紹介されることになっている。

 写真は自然史博物館に展示されている新発見の鉱物「ジャダライト」。(2007年4月24日撮影)。(c)AFP/NATURAL HISTORY MUSEUM