【北京/中国 22日 AFP】平和と社会調和を唱える孔子(Confucius)の教えが、混乱の中で急成長を遂げる現代中国において再び脚光を浴びつつある。

 毛沢東(Mao Zedong)時代の中国では抑圧された儒教だが、この中国が抱える多くの問題に対する国民の不満を鎮める手段として、共産党政権はその再興を歓迎している。

■「儒教学校」が開校

 「孔子の教えは、子供たちへ一番最初に伝えるものです」と語るのは、儒教学校のFeng Zhe校長。
 「彼らには、孔子の教えが心に刻み込まれるまで1000回も文言を復唱させます」

 北京郊外にある同校は、教育省から認可を受け、6か月前に開校したばかり。14歳までの46人が、暗唱を基本に学んでいる。Feng校長は、この学校は今後多く開校するであろう儒教学校のほんの一部だと見ている。

 Feng校長は、「今日、政府が奨励する科学の発達と調和した社会という概念は、古代の中国文化に由来するもの」と語る。中国では、伝統遺産である儒教に再び注目が集まっており、同校長は今後10年間で1万校以上の儒教学校が開校すると予想している。

 同校関係者のTao Ye氏はさらに、古代中国から伝わる最高の思想と世界の古典を組み合わせることを目指しているとし、自国の文化と欧米の文化の両方を知る人間を育てることが目的だと語った。

■現政権は孔子を「公的に称賛」

 1973年、文化大革命を指揮した毛沢東は、林彪(Lin Biao)と孔子の批判運動を展開した。孔子は、その教えが中国社会を後進的で従属的なものにさせるとして批判された。

 それから30年後の現在、共産党政権は公的に孔子を称賛している。胡錦濤(Hu Jintao)国家主席が前年提唱した「八栄八恥」という声明の中で、「中国国民は祖国を愛し、人民に尽くし、勤勉であるべきだ」と呼びかけたが、これらはすべて孔子の教えの中にある。

 政府はこうした儒教回帰を抑制するどころか、国民から上がる不満を鎮める手段として奨励している。急成長を遂げる中国だが、多発する汚職問題などに対して2005年には8万7000件以上も抗議活動が発生、国民からの不満の声も多い。

■メディアを通じ、再び台頭

 2500年の歴史を持ち、子が親へ従うように権威に従うことを唱える孔子の教えを学ぶことは、ここで学ぶ生徒たちにとってより良い人間になるために重要なものといえる。
 「普通の学校で中国語や算数を習うのもいいけれど、儒教の方がもっとためになります」と10歳の生徒Liu Zhenranさんは話す。
 「ここでは孔子の教えに従い、良い人間になることを学びます。この方が将来には役立つと思います」

 同校に集まるのは、年間3万元(約46万円)の学費を払える裕福な家庭の子供が多いが、儒教はテレビや本などの媒体を通じて中国社会全体で再び台頭しつつある。

 最近ベストセラーとなった書物の1つに、北京師範大学(Beijing Normal University)のYu Dan教授が孔子の教えを伝えたテレビシリーズを書籍化したものがある。Yu教授は、「わたしの講義を聞き、わたしの本を読んでくれる人々は、自分の人生に対して誠実な人であり、中国人とは何かという問いに対する答えを見つけようとしている人だと思います」と話す。同教授の講義のポイントは、「孔子の教えを現代社会に適用する方法」という。

 写真は2日、北京郊外の儒教学校に掲げられた孔子の絵とそこで学ぶ生徒たち。(c)AFP/Peter PARKS