【カイロ/エジプト 15日 AFP】エジプト政府は15日、ベルリン国立博物館が所有する古代エジプト王妃ネフェルティティ(Nefertiti)の胸像について、展覧会のための一時貸し出しが認められなかった場合、エジプトは今後ドイツで開催される展覧会への出品協力を行わないと警告した。

 中東通信(MENA)が伝えたところによると、最高考古庁長官で考古学者のザヒ・ハワス(Zahi Hawass)博士が議会で、「来週、ネフェルティティ王妃の胸像を3か月間エジプトで展示するための許可を正式に申請する。もしドイツが貸し出しを拒むならば、(エジプトは)2度とドイツで古代エジプト展を開催しないだろう」と述べた。

 ハワス博士は、エジプトから持ち出され世界各地の博物館に収蔵されている古代遺跡出土品の返還を求める活動を展開している。

 これに先だち、ドイツのベルント・ノイマン(Bernd Neumann)文化相は、「輸送するには脆すぎる」として、貸し出しを拒否する発言をしていた。

 ノイマン文化相は、ドイツで胸像を期限付きでエジプトに貸し出すキャンペーン「ネフェルティティの旅(Nefertiti travels)」が始められたことに対し、「専門家らは、ネフェルティティに長旅をさせることには消極的だ。われわれはこうした見解を重視している」と述べた。

 ベルリンで博物館などの展示品を管理するプロイセン文化遺産財団(Prussian Cultural Heritage Foundation)もまた、「3000歳の王妃にとっても旅は退屈で疲れるものだろう」と述べ、返還に否定的だ。

 ネフェルティティの胸像は、ドイツ人考古学者らのチームがナイル河畔で発掘し、1913年の協定に基づいてドイツに持ち帰った。アドルフ・ヒトラー(Adolf Hitler)はかつて、この胸像を「真の至宝」と称している。

 胸像をめぐってはこれまでにも、2003年にベルリン国立博物館が胸像に部分的に手を加えたことから、エジプトが抗議するなど、ベルリン市との間で論争が起きていた。

 ネフェルティティは古代エジプトのファラオ、アクエンアテン(Akhenaton、アケナトン)王の妃で、古代エジプトの3大美女とされる。アクエンアテン王は、それまでエジプト王国で信仰されてきた多神教のアメン神を否定し、一神教の太陽神アテン信仰を宣言したことで有名。

 写真は、ベルリン国立博物館所蔵のネフェルティティ像。(c)AFP/DDP/OLIVER LANG