【オタワ/カナダ 29日 AFP】カナダ西部の都市で、「強烈な」香水の匂いを漂わせた女性がバス運転手に乗車を拒否されるという事件が発生した。

■一度ならずも、二度の乗車拒否

 この女性が香水の付けすぎで乗車を拒否されたのは、それが2回目だったという。

 国内メディアが報じたところによると28日、金髪で豊満な25歳の女性はお気に入りの香水、ジバンシィ(Givenchy)の「ベリー・イレジスティブル(Very Irresistible)」を吹きかけて出勤した。

 カイロプラクティックの助手として働く女性が通勤のためバスに乗ったところ、運転手は「香水の匂いがきつすぎて運転できない」と主張、女性を降車させた。翌日、女性がやはり香水を付けてバスに乗車しようとすると、またしても同じ結果となった。

 ナショナル・ポスト(National Post)紙によると、乗車を拒否された女性が、バスを運営する会社に苦情を申し出たたところ、同社は「バス後部の空いた窓の横の座席に座るように」と勧めた。これを聞いた彼女は、現代の「ローザ・パークス(Rosa Parks)※注」になったような気がしたという。

 後日、女性はカナダのテレビ局CTVの取材に応じ、「大勢の乗客たちの前で侮辱され、とても恥ずかしい思いをしました。泣く泣くバスを降りたんですよ」と話している。

 ちなみに、彼女が愛用していている香水のコピーは「女性の持つ奔放さ、大胆さ、官能を引き出す」というもの。


■変化するカナダの人々の「香り」に対する意識 

 カナダでは、過去数十年間に公共の場での喫煙が「非常識」とされるようになったのと同じように、香水のつけすぎについての考え方も変わりつつある。カナダ西部の都市ハリファックス(Halifax)では2000年に、いわゆる「香水禁止条例」が制定された。現在同市では、学校、図書館、裁判所のほか、職場や劇場、店舗など、公共の建物すべてにおいて、香水の使用が禁止されている。

 この「事件」は、こうした香りに対する意識の変化を象徴するものだと、専門家は指摘する。Roedy Green氏はグローブ・アンド・メール(Globe and Mail)紙で次のように述べている。
「昔はタバコの煙が嫌な人は別の場所へ移るのが当たり前でした。でも今では、他人の吸う空気を汚染してはならないという考え方が常識となっています」。

 カナダ肺協会(Lung Association)によると、近年、空気汚染に敏感な、ぜんそくやその他の肺疾患を患う人の数が増えつつあることから、「香水禁止」の標識をはじめとする関連商品についての問い合わせが激増しているという。

 ※注: ローザ・パークス 米国で人種隔離法が施行されていた1950年代、バスの車中では白人と黒人の席にはっきりと分けられていた。黒人であるパークスはバスで帰宅する途中、白人が少なかったので中間席に座っていたが、運転手に席を立って後方に移るように命じられた。これを拒否したため、市条例違反で逮捕された。

 写真は香水の瓶(2006年12月16日撮影)。(c)AFP/VALERY HACHE