【ジュネーブ/スイス 7日 AFP】8日から一般公開が始まる第77回ジュネーブモーターショー(Geneva Motor Show)に、中国の自動車メーカー「華晨汽車(ブリリアンス・オート、Brilliance)」が初登場する。きらびやかな車両の連なる会場では「控えめ」な出展だが、独特のオーラを醸し出している。

 同社のHans-Ulrich Sachs欧州担当最高経営責任者は、「自動車発祥の地で中国車の市販が始まる今日という日は、我が社の歴史の中でも画期的な日だ」と語った。

 遼寧(Liaoning)省瀋陽(Shenyang)を本拠地とするブリリアンスは、頑健なルックスを持つサルーン車2モデルと、カナリア・イエローのクーペ1モデルのみを出展。国際的デザイナーが手掛けた最高級車や、世界的ブランドが長年をかけて開発した最先端技術モデルが並ぶ大ホールの中では、少々控えめすぎるようにも見える。

 国際的にはまだ「駆け出し」の中国の自動車産業が、欧州市場に進出を果たしたのは2年前。しかし、最初に輸出が予定されていた「江陵汽車(Jiangling Motors)の四輪駆動車「陸風(Landwind)」が、欧州での衝突試験で安全性能の低さを露呈し、進出初盤につまずいた。

 しかし、BMWの中国国内向け販売車の組み立てを担うブリリアンスは、品質の高さは保証済みだ。高級車志向に徹しており、出展されている3モデルの価格帯は1万7000ユーロ(約260万円)から2万2000ユーロ(約336万円)。Sachs氏は「適正価格です。我が社の車は極端に安いわけではない」と言う。「1台5000ユーロ(約77万円)前後で売れたら素晴らしいとみんな言いますが、その価格では利幅はほとんどありません」

 欧州での知名度を高めるため、ブリリアンスのブースには中国製であることを示す表示がほとんどない。欧州自動車市場における「中国ブランド」は、安価であることと同義語なのだ。マーケットでブリリアンスの目指すイメージはあくまで「国際ブランド」。ブランド信頼性の確立のために、アフターサービスも充実させる。

 ブリリアンスのモデルの中には、国際的な技術を結集したものもある。イタリアの工業デザイナー、ジョルジェット・ジウジアーロ(Giorgetto Giugiaro)のデザインスタジオ「イタルデザイン」で設計したボディーに、三菱製エンジンを搭載、欧州製のタイヤを使用し、組み立てのみが中国、という具合だ。 「欧州の自動車所有者の16%が中国車の購入を検討していると言います。我々は市場進出のまさしくスタート時点から、欧州色の非常に強い車種で挑もうとしています」(Sachs氏)

 ドイツ出身のSachs氏は、過去に韓国の自動車メーカーが欧州進出を果たした際に、「安くてデザインが悪い」というイメージの払しょくに成功した経験がある。韓国車は現在では、欧州各国で地元メーカーに脅威を与える存在に成長した。同氏は、国際的な信頼を得るまでに日本車は20年、それに続いた韓国車でさえ10年かかった点を強調する。「ブリリアンスが欧州で認知されるブランドに成長するには、5年で済むと思う」

 しかし、ブリリアンスが欧州市場に自動車メーカーとして受容されるためには、他の2、3社の中国企業の同時進出とそうした中国ブランドに対する好感度形成が必要だと指摘する。

 欧州市場でのブリリアンスの今年の目標販売台数は1万5000台。ディーゼルエンジン導入予定の2008年には、2万台から2万5000台の販売を目指す。ディーゼルエンジンは欧州の中でも最大市場を構成する2か国、ドイツとフランスでの需要が高い。さらに、2010年までに7万5000台を売り切ろうとしており、5か年計画で2倍以上の売り上げ増を狙っている。

 欧州初出荷分となる500台は3月中に、ドイツのブレーマーハーフェン(Bremerhaven)港に到着する予定だ。現在までにすでに欧州ディーラー930軒が販売先として登録済みだ。

 欧州の消費者に受け入れられるかどうか、8日からのジュネーブ国際自動車ショーの一般公開で初めてブリリアンスの真価が試される。

 写真は第77回ジュネーブ国際自動車ショーに出展された中国メーカー、ブリリアンスのクーペ「BC3」。(c)AFP/FABRICE COFFRINI