【ワシントンD.C./米国 5日 AFP】北太平洋上の大気異変や冬季に頻発する豪雨など、近年、北太平洋でみられる異常気象の原因はアジア地域の環境汚染にあるとする論文が5日、発表された。

 同論文は、テキサスA&M大学(Texas A&M University)で大気科学を研究するRenyi Zhang教授の研究チームによるもので、5日発行の米国科学アカデミー(National Academy of Sciences)会報に掲載された。

 Zhang教授らの研究は、アジアで数十年来急速に進む大気汚染と太平洋上での対流雲の頻発な発生を関連づけるもの。対流雲は温帯低気圧を活発化する「ストームトラック(storm track)」を伴う。

 気象衛星データによると、1994年から2005年における北太平洋上の対流雲の発生は、前の10年間と比較し20%から50%も増加しているという。これにより、北半球で冬季の異常気象の原因となっている太平洋ストームトラックの発生頻度も上昇する。
 
 研究チームによると、海温上昇やエルニーニョ(El Nino)現象などの気候変動と対流雲の間に関連はみられないものの、コンピュータの分析結果によれば、対流雲発生の増加傾向はアジア地域での大気汚染の変化と完全に一致したという。

 衛星の長期観測データによると、中国やインドをはじめ、アジア地域で急速に進む都市化や工業化の結果、エーロゾル(化石燃料の焼却などで大気中に浮遊する硫黄やススなどの微粒子)濃度が悪化していることが判明した。

 大気中のエーロゾルが雨雲の形成に影響する事実は、その程度は不明だが過去の研究で明らかになっている。

 また、すでに知られている様々な気候変動に加え、アジアの大気中汚染物質が偏西風により北太平洋に拡散することで、さらに冬季のエーロゾル効果が顕著になってきているという。 
 Zhang教授は「(アジアの)大気汚染が北米の気候変動に直接影響する」と確信する。

「太平洋ストームトラックは北米の気候を決定づける重要な要因。そして、地球の気候変動の原因が、我々人間の行動にあることは疑いがない事実だ」。

 写真は2月7日、香港島と九龍半島を結ぶスターフェリー。香港では大気汚染によるスモッグの発生が5か月間も続き、政府は健康に関する注意勧告を発令した。(c)AFP/MIKE CLARKE