【香港 5日 AFP】香港で開催された国際ペン会議に出席予定だった約20名の本土出身作家が中国当局によって参加を阻止されたことを、大会運営組織が明かした。

■未だに縛り付けられる表現の自由

表現の自由を擁護するための国際的な作家団体「国際ペンクラブ(International PEN)」は、阻止されたメンバーの中には、先頃、本土において発禁処分を受けた『Past Stories of Peking Opera Stars』の著者Zhang Yiheさんが含まれていたと伝えた。

PEN側は、Yiheさんが「複数の当局者」によって香港に行かないよう警告されたと述べたが、その正体と実名を明かすことは避けた。

月曜に終了した今回の会議には、中国本土、香港、台湾出身の作家が参加し、“検閲”“ネット出版”“投獄・亡命作家と女性作家”“著作権”などのトピックが話し合われた。

だが今回の中国当局による取締りを受けて、会議が中国における言論と表現の自由の問題にフォーカスされたとPENは語った。

「PENには、中国本土、台湾、香港や中国国外を含め、9つの中国系作家支部が存在する。我々は中国の作家・文学を大変尊敬している」とPEN会長のイジ=グルーサ氏(Jiri Grusa)は語る。

「しかし、中国本土において作家の表現や行動が厳しく規制されていることには大きな懸念を抱いている」

■五輪を狙った外国への表向き

最近の当局による本土作家の取り締まり強化の動きは、1月1日から一部緩和されることになった外国人ジャーナリストに対する規制に合わせたものとみられている。外国人ジャーナリストにこれまでよりも大幅な行動の自由を認めるこの規制緩和は、来る北京五輪を迎えるため、そして昨年国連安保理で採択された戦場ジャーナリストの権利保護の決議を受けて決められた。

PEN国際秘書官のJoanne Leedom-Ackermanさんは、外国人記者に対する規制緩和と同時に地元メディアへの厳しい規制を維持することで、中国は異なったメッセージを出しているという。

政府の秘密を漏らしたという罪で、ジャーナリストGao Yu氏が7年間投獄されたという一連の出来事は、外国人ジャーナリストと中国本土のジャーナリストの扱いの違いを浮き彫りにするものでもあった。

「うわべでは調和がとれたと言われるこの社会で、政府は五輪に向けて世界から理解、同情と協力を得ようとしているのだ」

「なぜ国内の記者は罪に問われるのか?国内の記者と外国の記者に対する政策や態度はどうしてここまで違うのか?」Gao氏はこのように述べ、中国での、より大きな言論の自由を求めた。

■ネットなど新たな規制にも乗り出す中国当局

時を同じくして、胡錦濤(Hu Jintao)中国国家主席はネットを規制する新たな措置をとることを発表。一方、検閲機関もテレビのゴールデンタイム番組を監視するシステムの導入を検討している。

 専門家によると、3万から4万のインターネット警察が、中国国民がネット上で自由な情報を得ることを規制する「グレート・ファイアウォール・オブ・チャイナ(万里の長城“Great Wall of China”をもじったもの)」といわれるものの開発に携わっているという。

 国境なき記者団(Reporters Without Borders、RSF)は向上した点もあるというが、報道の自由の国別ランキングで中国は未だに167カ国中163位という位置にある。

 写真は会議に出席したジャーナリストのGao Yu氏。(c)AFP/MIKE CLARKE