【パリ/フランス 3日 AFP】国連の「気候変動に関する政府間パネル(Intergovernmental Panel on Climate Change、IPCC)」が2日に発表した報告書の内容が明らかになった。

 この報告書はIPCCが今年発表を予定している3つのものの一つ。他の2つは気候の変化による社会的・経済的影響、およびこれによるリスクの軽減を扱う。

 1988年に初めて作成されたこの報告書は、今回4度目となる。前回は2001年。

■過去の温暖化

1. 気候の体系の変化は「疑いの余地」がない。

 1906年から2005年の過去100年、地表の温度は0.74度上昇している。これは2001年に IPCCが発表した数値の上方修正となる。2001年の報告書では1901年から2000にかけて0.6度上昇したとしていた。

 20世紀後半の50年は、気温上昇のペースが同世紀の平均より2倍の速さで進んでいる。北半球の同時期50年の平均気温、過去500年のどの50年と比べても最も気温が高かった可能性が非常に強く、過去1300と比較しても同様となる可能性がある。

過去12年のうち11年が、暖かい年の記録を塗り替えた。

2. 20世紀後半の気候上昇のほとんどの原因は「高い確率で」、人類によって引き起こされている。高い確率とは90%以上の確率という。2001年の報告書は、この可能性を66%の可能性を示す「恐らく」と表現している。

3. 地球温暖化は今や複数の見地から、「現在、歴然」と考えられている。海洋温暖化は、海水が熱を吸収することで、3000メートルの深さまで達している。山間部の氷河と積雪は全世界的に後退している。1961年から2003年にかけては海洋面が世界平均で毎年1.8ミリ上昇したが、1993年から2003年にはこのペースが毎年3.1ミリに上昇した。

この上昇はの原因のほとんどは、熱による海水の膨張による。水は温度が上がると体積を増す。ほかに氷河や雪が溶けたことによってできる水が海洋へ流入することも原因となる。

4. 干ばつは1970年代から、「期間と規模を拡大」するようになり、熱帯および亜熱帯地方を中心により広い地域で観測されるようになった。

5. 1900年から2005年にかけて、南北米大陸の東部、ヨーロッパ北部、アジア北部および中部での降雨量が増加した一方、サハラ南部、地中海、アフリカ南部、アジア南部の一部などでは乾燥化が進んだ。

6. 北極圏の地表の永久凍土層は1980年代から3度近く上昇した。北半球全体で、冬季に土が凍結する地域の最大面積は1900年に比べ7%減少した。

■21世紀の見通し

1. 2100年までに地球の平均気温は、1980年から1999年までの水準に比べ1.1度から6.4度上がると予想される。この数値は温暖化ガスの主要な成分である二酸化炭素の空気中の濃度を電子計算機を使ったシミレーションで得たもの。

「B1シナリオ」と呼ばれる低い数値は、エネルギへー利用の環境対策が大幅に進んだ仮定で計算されたもの。「A1F1」と名付けられた数値は化石燃料の使用を現在のまま継続した場合に導かれた。

2. IPCCは実際のところ、1.8度から4.0度の上昇幅を可能性の高い予想と発表している。2001年にどう機関は1.4度から5.8度の上昇を予想していた。

3. 一方、海水面は、空気中の2酸化炭素濃度の上昇で、18から58センチメートル上昇する。2001年の予想は、9センチから88センチの上昇だった。この修正は、海洋の熱吸収についての計算が精度を増したためとIPCCの関係者は述べている。

4. 温暖化の度合いが著しいのは、北極圏の陸地であり、影響が少ないのは南洋と大西洋北部だという。

5. 空気中の二酸化炭素濃度の上昇は、海洋表層に集まる微生物による二酸化炭素吸収を促進し、海洋の酸性化を引き起こす。

6. 積雪規模は縮小し、永久凍土が深度まで溶け出すことになる。海氷は二酸化炭素濃度増加の度合いにかかわらず、両極で減少する。一部の予想によると21世紀後半に、北極で夏後半に海氷の姿を見ることが不可能となるかもしれないという。

7. 温暖化が著しく進んだ場合の予想では、酷暑と激しい降雨が「高い可能性で」、よりしばしば起こることになる。

8. いっそう強力な暴風と豪雨をともなう台風やハリケーンなどは、規模はますます大型化するが、これによって、これらの気象現象の頻度が減少するかは現在のところ不明。これら非常に強い熱帯性の嵐は、両極方向に勢力範囲を拡大する。

9. メキシコ湾流は「高い確率で」海流の流れが遅くなる。21世紀には平均して25%ほど減速する。しかし、これを受けても欧州が新たな氷河期に進むことはない。高い大気温度が、大西洋を欧州に向かうこの海流の温度低下を相殺する。

10. 南極については、今世紀中に氷床が大規模に溶け出すかどうかの確証は、その規模が非常に大きく、また温度も低いため、現在のところ得られていない。一部の研究では、降雪が増加することで、体積を増すという説も唱えられている。しかし多くは、南極の海岸沿いの氷河が溶け出すと、南極の氷全体は減少すると見ている。

 写真は、南極の皇帝ペンギン。(c)AFP/IPEV