【ロンドン/英国 7日 AFP】北海の沖合に設けられた第二次世界大戦時の海上要塞で、過去40年間にわたり一国として「統治」されてきた「シーランド公国(Principality of Sealand)」が、売りに出されることがわかった。タイムズ(Times)紙が8日、報じた。

 英国東部ハーウィッチ(Harwich)沖合約11キロに位置する面積わずか550平方メートルの小国「シーランド公国」は、もともと、1941年に建設された海上要塞「Roughs Tower」である。シーランド公国への「足」はヘリコプターかボートのみと少々不便だが、現在の「統治者」は、360度の水平線、完璧なプライバシー、そして“タックスヘイブン”が魅力だと語り、数千万ポンド規模での売却を考えているという。

 タイムズ紙によれば、シーランド公国マイケル皇太子(Prince Michael of Sealand)は次のように語ったもよう。
「われわれは40年間にわたりシーランド公国を統治してきましたが、すでにわが父も85歳になりました。そこで、そろそろ国の活性化が必要ではないかと思ったのです。(売却価額については)天文学的な数字が噂されていますが、われわれとしては、どのような提示額があるかまずは見てみたいと思っています」
 実際にひとつの「国」と認めてよいのかどうか微妙なシーランド公国だが、軍事力によって外敵から主権を守り通した点では、ほかの国々と何ら変わりはない。

 そもそも1967年、元英国軍人のパディ・ロイ・ベイツ(Paddy Roy Bates)が一族とともに海上要塞「Roughs Tower」を占拠し、自らを「大公」としてシーランド公国の独立を宣言したことにある。翌年、英国海軍がベイツ一族の排除を試みたものの失敗。「領海内」に侵入したとして、大公が威嚇射撃、海軍の接近を阻んだのである。その後、シーランド公国は英国領海(3海里)外にあり、英国の法律は及ばないとの判断が下された。

 1974年、ロイ・ベイツ大公は憲法を発布。さらに、国旗や国家も定めた上、コイン(米ドルと等価のシーランド・ドル)とパスポートまで発行した。 1978年には、オランダ人とドイツ人のビジネスマンが商談のもつれから大公の息子を誘拐するという事件が起きたが、後日、戦争捕虜として捕らえられた。

 写真はセール」のポスターの前に立つ人々(資料写真)。(c)AFP