【8月15日 AFP】内戦で荒廃したソマリアで22年にわたり活動してきた緊急医療援助団体「国境なき医師団(Medecins Sans FrontieresMSF)」が14日、拡大する危険性への警戒を理由に、「アフリカの角(Horn of Africa)」と呼ばれるアフリカ大陸東部の地域にある同国でのすべての医療活動を停止した。

 MSFのウンニ・カルナカラ(Unni Karunakara)会長は記者団に、「我々が活動を停止する直接の原因は、武装集団や民間の指導者たちが人道援助従事者の殺害や誘拐および彼らへの襲撃を支援、容認、容赦する状況の中で、我々のスタッフに対する極端な攻撃が行われてきたことである」と語った。

 どんなに困難な状況でも活動するとの評価を得ているMSFの撤退は、国際的な支援を受けているソマリア政府の評判への大きな打撃となる。

 声明によると、MSFはソマリアで今年だけでも30万人以上を治療している。

 カルナカラ会長は、2011年12月に首都モガディシオ(Mogadishu)でスタッフ2人が殺害され、その犯人が後に釈放された事件と、同年10月にケニアのダダーブ(Dadaab)難民キャンプからスタッフ2人が拉致された事件を例に挙げ、同医師団の活動が「他に例を見ない水準の危険」にさらされていると語った。ケニアで拉致されたスペイン人女性2人は今年、1年9か月ぶりに解放されている。

 さらに同会長は、「紛争地帯では、人道主義の原理への敬意が常に失われがちではあるが、ソマリアではもはやそれが存在していない」「人や車両、病院への攻撃は何十回も行われ、もう限界に来ている」と述べ、1991年以来ソマリアではMSFのスタッフ16人が殺害されたと付け加えた。

 昨年、MSFの1500人以上のスタッフが行った診察は62万4000件以上で、4万1000人以上の患者を入院させている。(c)AFP/Aymeric VINCENOT