【7月23日 AFP】欧州連合(EU)は22日、レバノンのイスラム教シーア派原理主義組織ヒズボラ(Hezbollah)の軍事部門をテロ組織に指定することを決めた。

 ヒズボラの軍事部門は、イスラエル人観光客が死亡した2012年のブルガリアでの爆発事件に関与しているとされ、また今年3月には、キプロスで同様の襲撃を計画していたとして所属する戦闘員に有罪判決が下されている。

 ヒズボラは2006年のレバノン紛争でイスラエルと激しく交戦し、最近ではシリアで内戦に発展した民衆蜂起を鎮圧しようとするバッシャール・アサド(Bashar al-Assad)大統領を軍事的に支援している。ヒズボラがシリア政府軍に戦闘員を送り込んでいることを認めてからは、ここ数週間でEUの対ヒズボラ制裁への支持が広がっていた。米国、オーストラリア、英国、カナダ、オランダはすでにヒズボラをテロ組織に指定している。

 このEUの決定についてヒズボラ側は、米国とイスラエルの圧力の結果であり、EUの利益にかなわないと警告している。またレバノン政府もEUに対し、ヒズボラは「レバノン社会の不可欠な一部」であり、テロ組織指定を行わないよう求めていた。

 ただヒズボラの軍事部門に対するテロ組織指定の効果について、専門家らは懐疑的だ。レバノン大学(Lebanese University)のWaddah Charara教授(社会学)は「ヒズボラで最も実動的で危険なのは治安部門であって、軍事部門ではない。特にヒズボラが数多くのチャンネルを通じてひそかに活動している点を考えると、EUの決定では不十分」と警告する。

 EUは、米国での同時多発テロ後の2001年末に、個人や組織を対象としたテロ指定や制裁措置を採用した。昨年末の時点で指定されている25組織には、複数のパレスチナ組織や南米コロンビアの左翼ゲリラ「コロンビア革命軍(FARC)」、ペルーの左翼ゲリラ「センデロ・ルミノソ(輝く道、Shining Path)」らが含まれている。個人についても別途11人が指定されている。

 今回の決定は数日以内に法的形式に整えられ、その後、資産凍結といった制裁措置が検討される。(c)AFP/Bryan MC MANUS