【5月25日 AFP】これまで一度もニュースになることのなかったイラク戦争中のさまざまな物語、英雄的人物やその行動を目の当たりにした報道写真家たちの「目撃者としての証言」を収めた新著の発表会が先週、米ニューヨーク(New York)で行われ、著者と寄稿者らが出席した。

 写真家で記者のマイケル・カンバー(Michael Kamber)氏の新著「Photojournalists on War: The Untold Stories from Iraq(報道写真家たちが語る戦争:伝えられなかったイラクの物語)」は、AFPカメラマンのパトリック・バズ(Patrick Baz)氏や、2011年にリビアで死亡したクリス・ホンドロス(Chris Hondros)氏などの報道写真家38人を対象に行ったインタビューをまとめたものだ。

 米テキサス(Texas)州にあるヒューストン美術館(Museum of Fine Arts, Houston)のキュレーター、アン・ウィルクス・タッカー(Anne Wilkes Tucker)氏は、この本が書かれる前は「戦争写真についての広い視点」を提供するようなインタビューはほとんど出版されてこなかったと指摘している。

「この本の中のインタビューは、報道写真家たちに声を与え、その経験を余すところなく伝えている。私が知る限り、ベトナム戦争以降の戦いについて集めたものの中で、これに匹敵するものはない…カンバー氏の本の奥深さに近付いたものは、他にない」

「写真家は物語の語り手。大半が話し好きだ」と、カンバー氏は書いている。「私たち(写真家)は、イラクの国民を除いて、他のどの民間監視団体よりも、この戦争を──実際の地上戦を見てきたと、確信している」

 寄稿者には、米AP通信(Associated Press)、英紙ガーディアン(Guardian)、米紙ロサンゼルス・タイムズ(Los Angeles Times)、仏誌パリ・マッチ(Paris Match)、ロイター通信(Reuters)、米誌タイム(Time)などに写真を提供している報道写真家が名を連ねた。

 インタビューでは、独裁者だったサダム・フセイン(Saddam Hussein)大統領の像が引き倒された当時や、ファルージャ(Fallujah)の戦闘など、2003年の米軍によるイラク進攻から始まった長期の戦いの中の出来事が、写真家らの視点で語られている。さらに、検閲やメディアの役割といった問題や、報道写真家らが混乱の中で戦いの様子や人々の物語を捉えるためにくぐり抜けなければいけない経験などについても触れている。(c)AFP