【4月8日 AFP】エジプトの首都カイロ(Cairo)とその近郊の町で、先週末からイスラム教徒とキリスト教徒の一派コプト教徒の衝突が相次ぎ、これまでに6人が死亡した。ムハンマド・モルシ(Mohamed Morsi)大統領の出身母体のイスラム教勢力と野党との対立が激化する中、国内が分裂し緊張が高まっていることが改めて浮き彫りになっている。

 今回の衝突のきっかけは5日夜、カイロ近郊の町ホスース(Al-Khusus)で、イスラム教の宗教施設に子どもたちが「かぎ十字」の落書きをしたことだった。50代のイスラム教徒がこの子どもたちを叱りつけたところ、通りがかったキリスト教徒の若者と口論になり、これがイスラム教徒とキリスト教徒の間の銃撃戦に発展。キリスト教徒4人とイスラム教徒1人が死亡したほか、教会やキリスト教徒の家が放火され、薬局が略奪の被害に遭った。

 さらに、この衝突で死亡した4人のキリスト教徒の葬儀が7日、カイロにあるコプト教の大聖堂で行われた際、参列者らがモルシ大統領を非難。その後、ひつぎを担いだ葬列が大聖堂を離れようとすると、地元住民らが投石し、再び衝突が起きた。目撃情報によると、機動隊が介入し大聖堂に向けて催涙ガスを発射。この衝突で1人が死亡した。

 葬儀に参列したコプト教徒の若者によると、葬儀はテレビ中継されており、キリスト教徒らが「(ムスリム)同胞団の統治を打倒せよ」とスローガンを叫んでいた。葬儀後は、ひつぎを担いで大統領府まで行進し暴力反対を訴える予定だったが、大聖堂の外で住民らが待ち構えていて石や瓶を投げてきたため、キリスト教徒側も反撃したという。

 エジプト保健省によると、一連の衝突で少なくとも84人が負傷したという。

 エジプトの8300万人近い全人口のうち、キリスト教徒は6~10%。2011年2月にホスニ・ムバラク(Hosni Mubarak)大統領が退陣して以降、コプト教徒とイスラム教徒はたびたび衝突しており、これまでにキリスト教徒を中心に約50人が死亡している。(c)AFP