【1月4日 AFP】大阪を起点に、東京や長崎へとガソリンや水、時にはチョコレートを満載したタンクローリーを日々淡々と走らせる仕事に退屈していたと話すトラック運転手のフジモト・トシフミさん(45)。バンジージャンプやサメ狩りといったアクティビティーを通じて普段とは違うスリルを楽しむことも可能だが、頑健な体格のフジモトさんは命を懸けるほどの「体験」を普通とは違う場所に求めた──「前線」だ。

 フジモトさんは高速道路をひたすら走る単調な日常から、熱い思いとともにシリアへと飛んだ。中東の紛争地域をめぐった最近の旅では飛び交う弾を避けながら夢中で写真や動画を撮影した。

 昨年は米国大使館に対するデモのさなかにイエメンに滞在し、その1年前にはエジプトの首都カイロ(Cairo)で、長期政権を敷いたホスニ・ムバラク(Hosni Mubarak)前大統領を失脚させた動乱のただ中にいた。今年後半にはアフガニスタンの旧支配勢力タリバン(Taliban)との接触を計画している。

 2013年の年明け、フジモトさんは1週間に及んだシリア北部の都市アレッポ(Aleppo)での旅を切り上げる準備を始めていた。過去半年間にわたり、アレッポではシリア内戦の中で最も激しい戦闘が繰り広げられた。国連(UN)によれば6万人が犠牲となっている。

 フジモトさんは2011年末にも2か月をシリアで過ごした。このときは観光ビザを活用したが、今回はトルコから密かに入国した。

 日本製の野戦服に身を包み、同じく日本製のカメラとビデオカメラを携えたフジモトさん。毎朝、衝突の前線とあらばどこへでも出かけ、かつては商業の中心地だったシリア第2の都市アレッポが破壊され行く様子をしっかりと記録した。

 英語どころかアラビア語も話せないが、聞こえてくる「危険」や「前線」といった単語を拾い覚えたフジモトさん。唯一のインタビュー手段は、グーグル(Google)の翻訳機能を用いることだ。前線を案内してくれるガイドがいないため、いつもひとりで旅をしているというが「アドレナリンがこんなに出ることはない」と話す。

 フジモトさんによると旅行者よりもジャーナリストのほうがシリアでは危険だという。フジモトさんは毎朝200メートルほど歩くだけで「前線」に到達し、反体制派「自由シリア軍(Free Syrian ArmyFSA)」の戦闘員たちが銃を構える真横に並ぶ。これがたまらないと言う。

 旧市街を歩いていてFSAの戦闘員たちに呼び止められたこともある。一緒に写真を撮ろうと誘われたのだ。中国人と思われることが多く、戦闘員たちもそのつもりで話しかけてきたとフジモトさんは笑う。

 写真を撮るために立ち止まると、さっきまで一緒にいた戦闘員たちが道の両側から一斉に「走れ、走れ、狙撃手がいるぞ!」と叫ぶ。しかしフジモトさんはそれを無視し、撮るべきものを撮って普通に立ち去る。写真は後でフェイスブック(Facebook)の友人たちに公開するという。

 自分はジャーナリストではなくて観光客だから、狙撃手の標的にはならないとフジモトさんは言う。撃たれたり、ましてや殺されたりするかもしれないが、自分は「サムライとカミカゼ」が合わさっているのだから怖くはないと語った。(c)AFP