【7月3日 AFP】西アフリカ、マリの世界遺産の砂漠都市トンブクトゥ(Timbuktu)で2日、15世紀建造のモスクの入口がイスラム武装勢力によって破壊された。

 破壊されたのは、シディヤヤ(Sidi Yahya)モスクの「聖なる扉」。国連教育科学文化機関(ユネスコ、UNESCO)のウェブサイトによると、シディヤヤモスクはトンブクトゥにある3大モスクの1つで、トンブクトゥが砂漠地帯の中心都市として栄えた1400年ごろに建造されたものだという。

 破壊の様子を目の当たりにし、むせび泣く住人もいた。ある住人は2日朝、「イスラム武装勢力がシディヤヤモスクの入口にある扉を破壊した。彼らはわれわれが決して開けなかった聖なる扉を破壊した」と話した。

 地元のイマーム(宗教的指導者)の親戚だという別の男性は、「この扉が開く日は世界の終わりだという人もいるのだが、イスラム武装勢力はそんなことはないと示そうとした」と話した。シディヤヤモスクの南向きの扉を開けると災厄を招くと信じられていたことから、この扉は数百年にわたって閉じられたままだった。

 扉の奥には聖人の墓があるが、イスラム武装勢力はそのことを知らない様子だったという。ある目撃者は「それを知っていたら建物全体を壊していたはずだ」と話した。

■「偶像崇拝」と霊廟を破壊

 AFPが独自に入手したビデオには、ターバンを巻いた男らが「アッラーフ・アクバル(神は偉大なり)」と繰り返し叫びながら、つるはしで霊廟(れいびょう)を破壊する姿が映し出されていた。砂ぼこりが立ち込めるなか霊廟には穴が開き、そばにはがれきの山ができた。

 3か月前にマリでクーデターが起きた後にトンブクトゥを含むマリ北部を掌握したイスラム系反政府勢力「アンサール・ディーン(Ansar Dine)」は霊廟を偶像崇拝的とみなしており、昔の聖者の遺体を安置したモスクをすべて破壊すると宣言。マリ政府や国際社会から激しい抗議の声が上がっている。イスラム協力機構(Organization of the Islamic CooperationOIC)は、破壊の対象となっているのはマリの重要なイスラム遺産の一部であり、偏狭な考えを持つ過激派による破壊行為を許すべきでないとの声明を出した。

 アンサール・ディーンは、前週末に合わせて7つのイスラム教聖者の霊廟を破壊した。「戦争犯罪」で起訴するとの国際機関からの警告をよそに、トンブクトゥで文化遺産の破壊を激化させている。(c)AFP/Serge Daniel