【5月28日 AFP】シリア中部のホウラ(Houla)で108人以上の死者を出した27日の「虐殺」が、バッシャール・アサド(Bashar al-Assad)同国大統領と、同大統領と交渉を続けるコフィ・アナン(Kofi Annan)前国連(UN)事務総長にとって重大な転換点となるかもしれない。外交関係者らは、両者の取り組みの見通しは良くないと見ている。

 国連とアラブ連盟(Arab League)のシリア特使を務めるアナン氏は、推し進めてきた和平案の命脈を保つべく2回目のシリア訪問を計画しており、一方のアサド大統領も自らの「生存」のための戦いを続けている。

 しかし、この度の「虐殺」はアナン氏のシリア訪問に暗い影を落とした。国連によれば犠牲者のうち49人が子どもで、24人が女性だった。遺体の多くは爆発でバラバラになり、一部は至近距離から射殺されていた。

 国連安保理は27日、ホウラへの重砲撃に関与した政府を厳しく非難した。だが、その声明は危機収束に向けて国際社会が一致結束するきっかけにはならなかった。さらに欧米の専門家らが、アサド大統領が今後何か月間も政権を維持し続ける可能性があると指摘するなか、シリアに派遣された国連停戦監視団も攻撃を受けるなど暴力も再び激化しており、アナン氏の和平交渉に対する期待は薄れ始めている。

 だが、国連の潘基文(パン・キムン、Ban Ki-moon)事務総長は、アナン氏の和平案が失敗に終わったときの「プランB(別の計画)」は無いと語る。国連安全保障理事会(UN Security Council)で拒否権を持つロシアと中国が反対する限り、前年リビアで実施されたような国際的な軍事行動を安保理が承認することはないからだ。

 国際社会の第2の懸念は、シリアに派遣されている国連監視団だ。同監視団は停戦中でない衝突地域に非武装で投入された史上初めての国連部隊だが、潘事務総長は28日、ホウラの虐殺により監視団への圧力はいっそう高まったと語った。

「国連監視団は暴力を阻止できていないと厳しい批判を浴びており、さらに一部の派遣先では、暴力を悪化させているとまで非難されている」と潘氏は安全保障理事会で語った。また国連車両が爆弾による攻撃や銃撃をほぼ毎日受けており、国連部隊は「危険な状態にある」と付け加えた。

 この度の国連ミッションについては、失敗するとの見通しが高まっている。現に米ニューヨーク大学(New York University)国際協力センター(Center on International Cooperation)のリチャード・ゴーワン(Richard Gowan)氏らは、アナン氏の計画は「壮大な失敗」に終わるだろうと予測している。(c)AFP/Tim Witcher

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