【5月23日 AFP】かつてはキリスト教の聖書学校の優等生で、今は家族が恋しく、テイクアウトの中華料理ファストフードが懐かしい――国際テロ組織アルカイダ(Al-Qaeda)系のソマリアの武装勢力で活動してきた米国出身のイスラム原理主義者は、自伝の中でこのように自らの人生を振り返る。

 自伝は『米国系イスラム聖戦士の物語』と題され、イスラム教のウェブサイトに投稿された。アブ・マンスール・アムリキ(アメリカ人の意味、Abu Mansoor al-Amriki)の名で知られる、米アラバマ(Alabama)州生まれのオマル・ハマミ(Omar Hammami)氏が執筆したとされる。

 アムリキ氏は2006年末以降、無政府状態のソマリアを拠点に同国内のイスラム過激派組織アルシャバブ(Shebab)で活動してきたとされ、米政府からテロ行為の容疑で指名手配されている。過去にはジハード(聖戦)を称えるラップを歌った映像など、外国人戦士を集めるための動画を公開したこともある。

■生命の危機感じ、自らの人生を回顧か

 かつてはアルシャバブ最高司令官の側近として、外国人戦闘員のリーダー格と目されていたが、アルシャバブ幹部と激しく対立し、3月には殺害されるかもしれないとの恐怖をビデオで訴えていた。5月16日に署名されたこの自伝が本物であれば、現在も生存していることの証となる。

 自伝によるとアムリキ氏は米国南部で、キリスト教プロテスタント・バプテスト派でアイルランド系の母親と、シリア系のイスラム教徒の父親の下に育った。10代の時には女の子のことで悩み、鹿狩りをし、聖書学校では一番の優等生だったと告白している。「かたやアイルランド共和軍(Irish Republican ArmyIRA)、かたやアルカイダの家系を持つために私は幾分、気性が荒いのかもしれない」と冗談めかして述べつつ、「今は母や父たちを3日間ほど訪れたい。こういった経験すべてが彼らにどのような影響をもたらしたのか、ときどき気になる」と記している。エジプトで捨ててきた娘にも会いたいとつづっている。

 米国での食生活を懐かしむ記述もある。「レストランをまわって中華料理やチキンウイング、ネスレ(Nestle)のアイスクリーム、おいしいコーヒーなどを注文したい」

 また、アムリキ氏は、ソマリアの首都モガディシオ(Mogadishu)の空港に到着したときのことや、戦闘員たちに溶け込むのが大変だったこと、自動小銃を与えられたときの喜びなどを述懐した。最初は自動小銃の使い方がまるで分からなかったという。やがて手榴弾を与えられたが使用経験はなく、「映画シリーズ『ランボー(Rambo)』で見たことがある」程度に過ぎなかった。

 一方で、飢えや無人機攻撃の恐怖にさらされ続けたことについてもアムリキ氏は詳しく述べている。「カエルを食べるのは法に反してるか否か、といった議論がよくされていた」

 自伝は「革命万歳」という言葉で締めくくられている。「アラーが正義のエンディングを私に与えてくれることを望むのみだ」

 英国のシンクタンク、王立統合防衛安全保障研究所(Royal United Services InstituteRUSI)は、アルシャバブに所属する外国人戦闘員はおよそ200人と推計している。(c)AFP/Peter Martell