【2月24日 AFP】シリアの反体制派の拠点となっている同国中部の都市ホムス(Homs)で取材活動中に、政府軍の砲撃を受けて負傷した英国人報道写真家ポール・コンロイ(Paul Conroy)氏(47)の動画が23日、動画共有サイト、ユーチューブ(YouTube)に投稿された。

 コンロイ氏は22日の砲撃で死亡した米国人ベテラン戦争特派員、メリー・コルビン(Marie Colvin)氏と同じ英紙サンデー・タイムズ(Sunday Times)所属。この砲撃ではフリーランスの仏人報道写真記者、レミ・オシュリク(Remi Ochlik)氏も死亡した。

 英国のテレビで放送された動画の中で、コンロイ氏は窓のない部屋で毛布やクッションの上に横たわり、右腕に点滴をしているようだった。

 コンロイ氏は「私は昨日の砲撃で負傷し、脚に3か所、大きな傷がある。同じ攻撃で同僚のメリー・コルビンも殺された」と述べた。「今は自由シリア軍(Free Syrian Army)の医療スタッフが最善の治療をしてくれている。大事な点だが、ここで私は客として扱われており、捕虜になっているわけではないことを付け加えておく。言うまでもなく、どのようなものであれ、政府機関の支援が受けられればありがたい」と語った。

 動画にはコンロイ氏の怪我について説明する医師の姿も映っていた。姿は映っていないが、コンロイ氏は現在安全な場所にいると言う別の人物の声も入っていた。しかし爆発音が鳴ると、この声の人物は、安全な状態はいつまで続くか分からないと話した。

■手術も受けられず

 22日の砲撃で負傷した仏紙フィガロ(Le Figaro)の記者エディット・ブービエ(Edith Bouvier)氏とフリーランスの写真記者ウィリアム・ダニエルズ(William Daniels)氏も23日、シリア国内からビデオメッセージで支援を呼びかけた。

 反体制派が撮影した動画の中でソファに横たわり、毛布をかけられたブービエ氏は落ち着いた様子で、ときおり弱々しい笑顔を見せながら次のように語った。「大腿(だいたい)骨のあたりで骨が、縦方向と横方向に折れた。急いで手術を受ける必要がある。医師たちはできる限りの手当てをしてくれたが、ここで手術はできない。私には停戦と、レバノン国境まで私を運んでくれる医療機器を備えた車が必要だ。そうすれば一番早く治療を受けられる」

 ブービエ氏はこの動画は23日午後3時(日本時間同10時)に撮影されたと語った。ユーチューブに投稿されたこの動画へのリンクは、シリアの反体制派から報道機関に電子メールで送られてきた。

 またダニエルズ氏の動画では、フィガロと米誌タイム(Time)のために取材していたという説明があり、自分は22日の砲撃で負傷しなかったが、電気は止まり食料も少なくなるなど状況は悪化していると話している。背景には砲撃の音が聞こえた。

■シリア大使に要求

 英外務省はコンロイ氏の帰国に向けて手配を進めていると発表した。英政府は駐英シリア大使を召喚し、コンロイ氏の安全を確保し、死亡した記者らの遺体を速やかに返還するよう要求した。

 サンデー・タイムズを所有する米メディア大手ニューズ・コーポレーション(News Corporation)のルパート・マードック(Rupert Murdoch)会長兼最高経営責任者(CEO)は22日、社員に向けたメールで「コンロイ氏を砲撃やスナイパーの銃撃から守って安全な場所に移し、コルビン氏の遺体を回収するために全力を尽くしている」と述べた。(c)AFP


【参考】
コンロイ氏の動画