【9月30日 AFP】崩壊したリビアのカダフィ政権の武器貯蔵庫から略奪された大量の武器が拡散し、リビアの安定を脅かしている。国際テロ組織アルカイダ(Al-Qaeda)のような過激な集団の手に渡ることも懸念されている。

 首都トリポリ(Tripoli)の放置された工事現場。銃弾が散乱する地面には、かつてライフルや手榴弾などが入っていたダンボール箱が打ち捨てられていた。8月末にカダフィ政権が崩壊すると、工事中だった住宅建設プロジェクトの地下に隠されていた大量の武器を入手しようと、5日間にわたって大勢の人がここに群がった。

「何百個も箱があった。武器を拾おうと何千人もここに来た。たいていは僕と同じように銃を1丁持っていくだけだったけれど、1人でいくつも持っていく人もいた。何日もかけてトラックに大量に積んでいく人もいた」と地元の若者イメド(Imed)さん(25)は語る。「いまトリポリではライフル1丁くらいは誰でも持ってるよ。手放そうなんて人は絶対にいないよ。僕たちは自由になったんだから」

■子どもの肩にロケットランチャー

 この住宅プロジェクトの地下は、トリポリ各所にカダフィ政権が持っていた武器集積場のひとつだったが、カダフィ政権崩壊後に略奪された。市民たちによると、闇市場でカラシニコフ銃が1丁650ドル(約5万円)、手りゅう弾は1個80ドル(約6000円)程度で売られている。弾丸は1個1ドル(約76円)もしない。

 武器の多くはカダフィ支持派の最後のふたつの砦、シルト(Sirte)とバニワリド(Bani Walid)への攻勢を強めている反カダフィ勢力の連合体「国民評議会(National Transitional CouncilNTC)」の手に渡っている。

 しかし、トリポリ市街にもこれらの武器があふれている。トリポリ市内ではカラシニコフ銃ばかりかロケットランチャーを肩にかけた10代になったかならないかの少年たちまで検問所に立ち、夜になると自動小銃の銃声が響く。

■新政権の権威確立の障害にも

 欧米諸国、特に米政府はリビアの武器拡散を強く懸念している。米国務省はリビアの武器の処分に300万ドル(約2億3000万円)を拠出した。特に警戒しているのは、地上から民間航空機を狙うことのできる携行式地対空ミサイルの拡散だ。

 英国のシンクタンク、王立統合防衛安全保障研究所(Royal United Services InstituteRUSI)のシャシャンク・ジョシ(Shashank Joshi)氏は「リビアで貯蔵されていた兵器は、(フセイン政権が崩壊した)2003年にイラクにあった兵器よりも多いという情報もある。携行式ミサイルや携行式ロケット弾、小火器や銃弾などが大量に略奪された」と指摘し、ミサイルがアフガニスタンなど他の戦闘地域や民間機攻撃を計画中のテロリストに流れれば特に危険だと警告する。

 さらに、カダフィ支持派の砦が陥落してリビアに新しい政権が誕生したとしても、流出・拡散した武器によって政権の権威の確立が難しくなるという専門家もいる。

 ジョシ氏は「反カダフィ派のグループの多くは、自分たちの街を解放するためにそれぞれが武器を取り、どちらかといえば独立して戦っていた。誰が国を統治していくのか確実なところが明確にならない限り、彼らは武器を手放そうとはしないだろう」と語った。(c)AFP/Michael Mainville