【9月28日 AFP】オーストラリア政府は27日、同国軍の全ての軍務を性別ではなく能力によって決定する新たな方針のもと、前線戦闘任務に女性兵士が就くことを同国史上初めて認めた。

 オーストラリアのスティーブン・スミス(Stephen Smith)国防相は、26日に閣議決定された方針の変更に基づき、これまで男性に限定されていた軍務全体の7%にあたる任務に、女性兵士が就くことが可能になったと述べた。オーストラリアの軍事的パートナーのうち、女性兵士の前線配備を認めているのは、ニュージーランドとカナダ、それにイスラエルの3か国だけだという。

 女性兵士に必要な訓練や準備を施すため、同方針は5年かけて段階的に実施されるという。スミス国防相は、大きな文化的、作戦的な転換だと語った。

 現在、オーストラリア軍でフルタイムまたはパートタイムの軍務に就いている8万1000人のうち、女性は約1万人いる。新たに認められる軍務には前線歩兵隊や砲兵隊、海軍潜水隊、空軍地上防衛隊などになる。エリート職に男女問わず求められる身体的・精神的要件を記した新たなガイドラインを作成するという。

 女性兵士は、歩兵隊の隊長となることも認められる他、狙撃兵や特殊部隊隊員にもなることができる。スミス国防相は、今回の改革で、これまで男性に限定されていた国防軍司令官に、いつか女性が就任する日が来るかも知れないと語った。

■背後に軍のセックススキャンダル?

 国防・安全保障問題の監視団体・シンクタンクの「オーストラリア国防協会(Australia Defence Association)」のニール・ジェームズ(Neil James)代表は以前から、女性兵士には接近戦は危険すぎると述べ、前線では男性兵士よりも殺害されやすいと警告している。

 ジェームズ代表は、軍事における女性の能力についての調査が、現在国防当局によって実施されている最中だと指摘し、オーストラリア政府を「フライングした」と非難した。

 ジェームズ氏は、オーストラリア放送協会(ABC)ラジオで、「新たな政治的策略、あるいは注意をそらすためのもの以上であるとは思えない」と語った。

 オーストラリアでは、女性兵士をめぐる数多くのセックススキャンダルが明らかになり、軍内部での女性の待遇の調査が行われているところだった。最も広く知られたスキャンダルは、女性士官候補生が士官学校で性交渉をしているところをインターネットでストリーミング配信されたというものだった。

 このスキャンダルの調査を監督している男女差別検査官のエリザベス・ブロデリック(Elizabeth Broderick)氏は、今回の改革について、オーストラリア軍の文化を改善するための重要な一歩だと歓迎した。(c)AFP/Amy Coopes