【6月10日 AFP】リビアの最高指導者ムアマル・カダフィ(Moamer Kadhafi)大佐が兵士に集団レイプを指示していたとする国際刑事裁判所(ICC)のルイス・モレノオカンポ(Luis Moreno-Ocampo)主任検察官の主張に対し、リビア情勢を担当する国連人権調査団のCherif Bassiouni団長は9日、疑問を呈し、そうした主張は混乱するリビア国内の状況下における「集団ヒステリー」の一部だと指摘した。

 モレノオカンポICC主任検察官は8日、カダフィ大佐が反体制派に対する弾圧政策の一環として、バイアグラ系の性的不能治療薬を兵士に配り、集団レイプを行わせた証拠があると述べた。

 これに対しBassiouni氏は記者団に、反体制派が制圧しているリビア東部を訪れた際に確かにそうした主張を耳にしたが、首都トリポリ(Toripoli)でも「同じ話に遭遇した」と述べた。「しかも、言ってきたのは政権側の人々だった。『知っているか? 反体制派は集団レイプを作戦にしている。彼らが避妊薬やバイアグラの錠剤を配っているのを発見した』といった具合だ。なので私は、彼らに『それは反体制派から我々が聞いた話とまったく同じだ』と言った」

 さらにBassiouni氏は「これは、少なくとも私の解釈としては、情報が拡散する時に、受け手となる社会の側が脆弱な状態にあると生じる集団ヒステリーだ」との見方を示した。

 また、あるリビア人女性が、他の女性たちに7万通の調査票を送り、受け取った6万通の返信のうち259件で性的虐待の報告があったと主張している件について、国連調査団の要請にもかかわらず調査票が提出されていないと説明。「それでも彼女は世界中にそう言ってまわっている。そして彼女の情報がモレノオカンポ氏に伝わり、同氏は性的虐待を受けたと回答した女性が259人いる可能性があると信じたのだ」と語り、郵便が機能していなかった3月に、この女性が7万通もの調査票を送ることができたというのは疑わしいと指摘した。

 一方で、Bassiouni氏は国連調査団がこの主張について検証することを明らかにした。(c)AFP

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