【3月2日 AFP】リビアの最高指導者ムアマル・カダフィ(Moamer Kadhafi)大佐の退陣を求める反体制派が、政権打倒の方法をめぐる意見の違いを残しながらも、混沌とした抗議運動から急速に「もうひとつの政府」に進化しつつある。

 41年間に及ぶカダフィ大佐の強権支配に対する反乱は最初の数日間で多数の死者を出した。その後北東部ベンガジ(Benghazi)などの都市で組織され始めた反体制派による政治評議会や軍事評議会が、「カダフィ後」の構想を描き始めている。

 リビアの国連代表団の1人は1日、カダフィ大佐が首都トリポリ(Tripoli)の守りを固め、とどまり続けたとしても、暫定政権が機能し始めるだろうと語った。また陸軍の離反組も、カダフィ政権に対抗する反体制派との統一戦線構築に向けた検討を始めたと言う。

■反体制各派に意見の隔たり、治安部隊の反撃にも懸念

 しかし、こうした評議会が移行期のリビアの顔になるとしても、その内部には欧米諸国の武力介入による空爆の必要性から評議会の構成に至るまで、多くの点で意見の隔たりがある。

 例えば停止している公共サービスを再開させようと奮闘する中、反体制派の多くが懸念しているのはカダフィ大佐の治安部隊との力の差だ。反体制派がリビア東部の拠点から西部に突き進もうとした場合、統制のとれていない自分たちの部隊が、治安部隊に圧倒されてしまう可能性を恐れている。

 また西部では、一度は反体制派が掌握した都市でも、政府軍やカダフィ支持勢力が反転攻勢に出ている。反体制派が強い東部でも、カダフィ側の妨害工作員が入り込んでいないかどうか自主的に夜間パトロールを行っているほか、対空砲を配置するなどさらなる政府軍の空爆を恐れて緊張が高まっている。

■情勢はまだ流動的

 こうした恐怖と不安のなかで暫定的な権力が姿を現しつつあるが、情勢は混沌としている。司法書記(法相)を辞任したムスタファ・アブドルジャリル(Mustafa Abdel Jalil)氏は27日に東部のバイダ(Baida)で暫定評議会の発足を宣言したが、その翌日にはベンガジの反体制派も具体的な参加者の顔ぶれを明らかにすることなく独自の評議会の発足を発表した。

 リビアのイブラヒム・ダバシ(Ibrahim Dabbashi)国連次席大使はAFPの取材に対し、暫定政府の拠点はまずベンガジに置かれ、トリポリが「解放」された後にトリポリに移るだろうと語った。

 一方、カダフィ政権に対する武力行使の是非をめぐって割れている国際社会も、カダフィ政権後に目を向けている。米国のスーザン・ライス(Susan Rice)国連大使は、米政府はすでに反体制派の指導者たちに幅広く接触しており、リビア国民が「正当だと感じられる組織や政党、機構」作りを支援していくと表明した。(c)AFP/Samer al-Atrush