【2月4日 AFP】エジプト・カイロ(Cairo)中心部で2日と3日、反政府デモの取材にあたっている外国人ジャーナリストに対する襲撃や拘束が相次ぎ、ホスニ・ムバラク(Hosni Mubarak)大統領の支持派による「組織的な攻撃」だとして、米国を始めとする国際社会から非難の声が上がっている。

 標的となったのは、反政府デモの震源地タハリール広場(Tahrir Square)で反政府デモ隊と大統領支持派との衝突を取材していた複数の外国メディアの記者ら。大統領支持派に後をつけられ暴行されたほか、軍に身柄を拘束された記者もいる。

 米国の非営利団体「ジャーナリスト保護委員会(Committee to Protect Journalists)」は、「国際メディアに対する前例のない組織的な攻撃」だと非難した。

 また、市内で国際人権団体が事務所を構えるビルに警察が踏み込み、アムネスティ・インターナショナル(Amnesty International)とヒューマン・ライツ・ウオッチ(Human Rights WatchHRW)の外国人スタッフらが身柄を拘束された。

 ヒラリー・クリントン(Hillary Clinton)米国務長官は、エジプト政府と軍には記者らを守る「明確な責任」があるとして一連の攻撃を厳しく非難。国連の潘基文(パン・キムン、Ban Ki-moon)事務総長も、ジャーナリストや人権活動家への攻撃は「言語道断で到底受け入れられない」との声明を出した。英、仏、独、伊、スペインも共同声明で攻撃を批判した。

■「外国人記者はスパイ」、国営メディアが煽る

 取材にあたっていた特派員やカメラマンらの話によると、襲撃に先立ってエジプト国営メディアが、外国人記者らはスパイだと非難するキャンペーンを展開していたという。

 英BBC特派員は、秘密警察に手錠と目隠しをされ、3時間にわたって尋問されたと語った。

 スウェーデン公共放送SVTのレポーターの1人は、数時間にわたって連絡が取れなくなった後、「ナイフで刺され重傷を負った」状態でカイロ市内の病院にいるところを発見された。このレポーターは現在手術を受けている。

 デモの様子を24時間体制で報道しエジプト当局から目の敵にされているカタールの衛星テレビ局アルジャジーラ(Al Jazeera)は、特派員の1人がムバラク派に追い回され「ユダヤ人」「イヌ」などと罵声を浴びせられたことを明らかにした。また、2日には同局英語放送の記者6人が数時間身柄を拘束され、カメラを没収されたという。

 米CNNの看板特派員アンダーソン・クーパー(Anderson Cooper)も、自分とカメラマンがタハリール広場のすぐそばで襲撃を受けた状況について「修羅場だった。突然、男が向かってきて顔を殴ったんだ」と生々しく語った。

 サウジアラビア資本の衛星テレビ局アルアラビア(Al-Arabiya)とベルギー紙ルソワール(Le Soir)の記者も、ムバラク派に激しく殴られた。

 フランスBFM TVの記者3人は15分にわたって殴る、蹴るの暴行を受け、軍車両が通りがかってようやく助けられたという。トルコの国営トルコ・ラジオ・テレビ放送(TRT)の記者は殴られた挙げ句、財布やカメラ、携帯電話などを奪われ、トルコ大使館に逃げ込んだ。(c)AFP/Joseph Krauss