【2月3日 AFP】反政府デモの参加者たちは血まみれになりながらも、彼らが「最前線」と呼ぶ衝突の現場へ戻って行った─―。9日目に突入したエジプトの反政府デモの震源地となっている首都カイロ(Cario)のタハリール広場(Tahrir Square)では2日午後、ホスニ・ムバラク(Hosni Mubarak)大統領の退陣を求めるデモ隊の中に大統領支持派の一団が乱入し、激しい衝突で3人が死亡、639人が負傷した。

 日没後も続いた衝突のなか、大統領支持派が投げた火炎瓶のうち2本が、広場に近いエジプト考古学博物館の敷地内にも落ちたがすぐに撤去された。軍が威嚇射撃を放つ上空には、双方が投げ合う石が飛び交った。

「博物館へ行け、博物館のほうへ」と男性がメガホンで叫び、反政府デモの参加者らを誘導する。そして反政府派は、乱入以来絶え間なく攻撃してくる大統領派に対し、考古学博物館付近からいっせいに投石で反撃した。

 広場に乱入する際、ラクダや馬に乗り反政府派を追い立てた大統領派は、広場を囲む建物などの上から反政府派の群集に向かってコンクリートのブロックを投げ落とした。さらに両者は石、棒、鉄棒、短剣など持てるあらゆる種類の武器を手にし、大乱闘となった。

 広場からすぐのモスクの中に仮設の診療所が設けられ、看護師によると骨折や縫合を必要とする切り傷で数百人が手当てを受けた。

■大統領派乱入、「裏には与党と秘密警察」との非難

 反政府デモの参加者たちは、この大統領派との衝突について、ムバラク大統領の与党・国民民主党(NDP)が仕組んだものだと非難し、攻撃を始めた大統領派の人々が持っていたという4人分の党員証をAFP特派員に示して見せた。「親ムバラクのNDPと、私服を着た秘密警察が広場に侵入してきたんだ。反政府派を追い出すためだ」と、反政府派の63歳の男性は述べた。

 国営中東通信(MENA)が伝えたところでは、エジプト内務省は私服警官が広場に進入したことを否定している。しかし、反政府派は警察による急襲だと強く主張しており、日没後にさらに警官の数が増えることを懸念していた。

 一方、ムバラク大統領の支持者による襲撃は、大統領の権勢が弱体化している兆候だと見る反政府デモの参加者もいる。25歳の男性は「大統領は金を払って人を雇って、われわれを襲わせたんだ。ムバラクの最後の切り札だ。少しずつ、彼はすべてにおいて支配力を失っている」と語った。

 日没後もタハリール広場では、約5時間にわたり反政府派、大統領派ともに数千人の群集が投石や小競り合いを繰り返し、軍や医療当局の救急車が駆けつけては負傷者を運び去った。(c)AFP/Guillaume Lavallee

【関連記事】
エジプト、大統領支持のデモ隊がラクダで乱入
デモ隊と大統領支持派が衝突、3人死亡 エジプト