【8月9日 AFP】65年前に長崎市の浦上天主堂で被爆したマリア像、通称「被爆マリア像」が平和の象徴として、世界各地を「巡礼」している。

 直近では5月、ニューヨーク(New York)の国連(UN)本部で開かれた国連核拡散防止条約(Non-Proliferation TreatyNPT)の再検討会議や聖パトリック大聖堂(St. Patrick's Cathedral)でのミサで披露された。国連の潘基文(パン・キムン、Ban Ki-moon)事務総長は5日、長崎を訪れ、被爆マリアと再会した。

 ニューヨークへの道中、バチカンで法王ベネディクト16世(Pope Benedict XVI)の祝福を受け、スペインのゲルニカ(Guernica)ではドイツ軍による空爆の犠牲者を追悼する式典でも迎えられた。

 カトリック長崎大司教区の高見三明(Mitsuaki Takami)大司教はAFPに対し、平和巡礼の理由について、被爆マリア像に平和のために活動してほしいと思ったと説明。写真や映像を見せる、被爆体験を語るなどさまざまな方法があるが、被爆マリアは別の説得力があると考えたのだという。

 1945年8月9日、米軍が長崎市に投下した原子爆弾により市民7万人が死亡したとされ、中にはキリスト教徒8500人も含まれていた。

 長崎は江戸時代の鎖国下の大半において、外国に開かれていた唯一の港だった。長崎の修道士は、日本最大のキリスト教コミュニティーだった長崎をなぜ米軍が攻撃したのかわからないと語る。一方、原爆を生き延びた信者たちの多くは、神が与えた試練だと考えようとしたという。

 長崎の工場内部で被爆したある信者は、原爆があまりに無慈悲で泣くことすらできなかったと振り返る。多くの生存者は今も原爆の後遺症に悩まされており、自分にできることはただ祈ることだけだと語った。(c)AFP/Shingo Ito

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