【9月5日 AFP】ジアン・イエ(Jiang Ye)さん(36)が左腕に激しい痛みを感じたのは、中国・新疆ウイグル自治区の区都ウルムチ(Urumqi)の鉄道の駅で友人を待っていたときのことだった。

 当局によると、ウルムチでは8月中旬以降これまでに500人以上が注射針で刺されるという被害にあっている。ジアンさんもその1人だ。ウルムチでは7月、漢族とイスラム教のウイグル族との間で激しい衝突があり、多くの命が失われた。

 ウルムチでは3日、大規模な抗議デモが行われ、すでに高まっていた緊張に輪をかける形となった。被害者らがAFPに語ったところによると、注射針による襲撃事件は4日も続いている。

 4日、新疆ウイグル自治区人民病院(Xinjiang People's Hospital)の伝染病科を受診したジアンさんはAFPに対し、外出するのは怖くないが、体については不安が残ると語った。

「おととい、駅に友人を迎えに行ったんです。そのとき大勢の人にまぎれて犯人が列車から降りてきて、突然腕に刺されたような激しい痛みを感じたんです」と漢族のジアンさんは語る。

「犯人は見えませんでした。雨が激しく降っていて空は暗かった。でも、そのときわたしのすぐ近くに数人のウイグル族がいたのは間違いありません」

■「病気が心配」

 ジアンさんはブラウスの左袖をまくり、中心に針のあとが残る硬貨ほどの大きさのあざを見せた。

「とても心配です。病院では問題ないと言われたけれど、半年や1年経たないとわからない病気があるとも言われました」

 ジアンさんとともに小さな食料品店を営む夫(41)は妻の身に起きたことに「激しい怒り」を覚え、3日の抗議デモに参加したという。事件について初めて聞いたときは「怖くて死ぬかと思った」という。「政府が警備強化に向けて積極的な措置を講じているので大丈夫だと思いますが、とにかく平穏で安全になってほしい」

■病院でも刺される

 新疆ウイグル自治区人民病院で働く漢族のリュウ・エン(Liu Yan)さん(21)は、同病院にあるコンビニエンスストアの外に立っていたところ、左手を注射針で刺されたという。

「彼はとても背が高くて、間違いなくウイグル族でした。でもよく見る前に逃げてしまったんです」と悔しそうにAFPに語った。左手には針のあとがあるあざが残っていた。

「警備員は彼が逃げたと言っていました。病院施設内でこんなことが起こるなんて信じられません」

 国営新華社(Xinhua)通信が警察の情報として伝えたところによると、これまでに531人が注射針で刺されて病院で処置を受けたという。被害者にはウイグル族もいると報じたが、公式発表では犯人の身元については明らかにされていない。

 新華社によると、一連の注射針による襲撃で病気に感染したり毒に犯されたりした人はいないが、注射器の中身は依然として不明だという。(c)AFP/Dan Martin