【2月28日 AFP】武装勢力の掃討作戦がめっきり減り、完全撤退への動きも始まったイラクの駐留米軍。若い兵士たちにとって、このごろでは「退屈」が新たな敵となりつつある。

 バグダッド(Baghdad)空港に隣接したキャンプリバティー(Camp Liberty)では、イラクとは隔絶した生活が営まれている。メインストリートの「USAフードコート」には、バーガーキング(Burger King)、タコベル(Taco Bell)、サブウェイ(Subway)などのファストフード店に姿を変えたトレイラーが軒を連ね、ビジネスを競い合っている。

 キャンプ内の巨大スーパーでは、ほとんどすべての生活必需品に加え、DVDやCD、MP3プレーヤー、iPodなども手に入る。任務中のアルコールは禁止されているが、本国では経済制裁で輸入が禁止されているキューバの高級葉巻も、ここでなら楽しめる。

 キャンプ前にあるイスラム教のモスクから、夕拝の呼びかけが流れてくるなか、兵士たちは隣接したアル・ファウ(Al-Faw)宮殿の池を挟んでゴルフの技を磨いている。その池で釣りをしたりアヒルに餌をやる兵士、故ヤセル・アラファト(Yasser Arafat)元パレスチナ解放機構(PLO)議長が故サダム・フセイン(Saddam Hussein)大統領に贈ったとされるひじ掛けいすに座って写真を撮り合っている兵士たちもいる。

 この宮殿は、フセイン大統領がイラン・イラク戦争(1980-88年)の「勝利」を記念して建てさせたものだが、現在はフセイン政権の転覆を記念して「勝利の宮殿」と呼ばれ、米軍を中心とした多国籍軍の本部となっている。イラク国内に展開するほかの部隊にとっては、観光名所にもなっている。

■「銃を使ったことはほとんどない」

 2003年3月のイラク進攻以来、米軍には4250人の犠牲者が出ているが、ここ最近は全土で暴力が収束しつつあり、この数か月間はキャンプへの攻撃は起きていない。20歳のある兵士は「ここに来て4か月だけど、銃を使ったことはほとんどない」と語る。

 今年1月1日、バグダッド中心部の米軍管轄区域グリーンゾーン(Green Zone)の治安権限がイラク政府に移譲され、イラクの主権の完全回復に向けた歩みが始まった。だが前年11月のイラク政府との安全保障協定に基づき、米軍の戦闘部隊は2011年末まではイラクに駐留する。

■イラク人と交流しない米兵

 再び、キャンプリバティー。イラク南部に駐留する3人の従軍牧師が若い護衛らに、古代ウル王朝のジッグラト(ピラミッド型神殿)や預言者アブラハムの生誕地の写真を見せている。文官向けにイラク国内の歴史遺産を訪問するツアーが実施されているのだ。

 一方、イラク軍と活動してきた兵たん担当のエドワード・ドーマン(Edward Dorman)大佐は、「米国とイラクは、文化の違いを克服する努力をしなければならない」と説く。だが、共同の任務やイラク人通訳とのやりとりをのぞいては、米兵14万6000人は、キャンプの外側にいるイラク人とはほとんど接することはない。(c)AFP/Haro Chakmakjian