【12月2日 AFP】死者188人を出したインド・ムンバイ(Mumbai)の同時襲撃事件をめぐり、政府の情報収集活動の失敗に批判が高まるなか、インド政府は2日、パキスタン政府に事件に関与した「テロリスト」として複数の容疑者の引き渡しを要求したが、パキスタン首相は証拠の提示を求めた。

 同事件をめぐり両国関係が緊張するなか、外交筋によると駐パキスタンインド大使は1日、パキスタン高官と面会し、インド・パキスタン間にあるカシミール(Kashmir)地方の分離独立を求めるイスラム系武装グループ「ラシュカレトイバ(Lashkar-e-Taiba)」の指導者であるハフェズ・サイード(Hafeez Sayeed)容疑者など、関与が疑われる複数の人物の引き渡しを求めた。

 しかし、実行犯が全員パキスタン人だったというインド側の主張について、ユサフ・ ギラニ(Yousuf Raza Gilani)首相は、米CNNテレビのインタビューに対し、「インド側が示したのは複数の組織(の名称)だけで、それでは証拠にならない。わが国が関係しているという証拠があれば全面的な協力は惜しまないが、まずは証拠が先で、それに対しわれわれは自分たちの見解を下す」と述べた。

 また同首相は、国際テロ組織アルカイダ(Al-Qaeda)やアフガニスタンの旧支配勢力タリバン(Taliban)との戦いの前線となっているパキスタン北部の部族地域から、東部のインド国境沿いの治安増強にパキスタン軍を移動させるかもしれないとの報道について否定した。

 CNNなど米報道機関では、ムンバイのホテルやビジネス中心地が、前週の襲撃事件と同様のシナリオで海路の侵入者により標的にされる可能性を、米国が10月にインド側に警告していたと伝えた。

 米ABCテレビは、60時間にわたり武装グループに占拠されたムンバイの10か所のうちの1つ、タージマハル・ホテル(Taj Mahal Hotel)を名指しした米高官もいたと報じた。

 また同テレビによると、インド側の情報当局は11月18日、ラシュカレトイバの幹部が使用するパキスタン国内の番号にあててかけられた電話を盗聴していた。ここでも海路からの侵入による攻撃の可能性について語られていたという。(c)AFP/Phil Hazlewood