【11月30日 AFP】インドで195人の命が奪われたムンバイ(Mumbai)同時襲撃事件について、事件発生を阻止できなかったのは情報活動の失敗だとの批判が高まるなか、シブラジ・パティル(Shivraj Patil)内相が30日、引責辞任した。

 インドと米国の捜査当局は今回の襲撃にパキスタンに拠点を置くイスラム過激派「ラシュカレトイバ(Lashkar-e-Taiba)」が関与したことを示唆した。しかしパキスタンのアシフ・アリ・ザルダリ(Asif Ali Zardari)大統領はインド側に「過剰な反応」の抑制を求めている。

■2001年インド議会襲撃事件の黒幕組織の名

「ラシュカレトイバ」は両国間にあるカシミール(Kashmir)地方の分離独立を求めるイスラム系武装グループで、2001年に両国関係が交戦寸前にまで悪化したきっかけとなったインド議会襲撃事件の背後にいた組織。同年9月11日の米国同時多発テロの後に政府に非合法化されるまでは、公然と活動していた。

 インドのメディアは、ファッション・ブランド「ヴェルサーチ(VERSACE)」のロゴ入りのTシャツを着た姿を防犯カメラで捉えられ、ムンバイの襲撃犯のうち唯一生存しているアジマル・アミル・カマル(Ajmal Amir Kamal)容疑者(21)が、尋問で襲撃グループのメンバーは全員ラシュカレトイバの訓練を受けたパキスタン人だったことを認めたと報じた。

■再び横たわるカシミール問題の影

 インドのプラナブ・ムカジー(Pranab Mukherjee)外相が「パキスタン領内の勢力」の関与を言及する一方で、米国の対テロ機関の幹部もAFPに対し、襲撃事件の背後にラシュカレトイバの関与が疑われる証拠が得られつつあると語った。

 事件中、ムンバイのユダヤ人文化施設で人質をとった戦闘員は、襲撃の最大の動機としてインドがカシミール地方でイスラム教徒を不当に扱っていることを口にしていた。後に特殊部隊に射殺されたこの人物は、テレビ局の電話取材に対し「カシミールで何人が殺されているか分かっているのか?」と詰問した。

 しかし、カシミール地方をめぐってインドと2回の戦争を経験したパキスタン政府は、事件直後、襲撃への関与を一切否定した。一方で、ラシュカレトイバも関与を否定している。

 当局発表によると今回の事件での死者は195人、負傷者は約300人に上った。死者のなかには外国人約30人が含まれ、国籍の内訳はイスラエル9人、米国5人、フランス、オーストラリア、カナダが各2人、ドイツ、シンガポール、日本、英国、イタリア、タイ、モーリシャスが各1人などとされている。

 実行グループのメンバーの一部は海からムンバイに入っていた。また、1か月前から武器や爆薬の保管場所を確保し、標的とした施設などに潜入を図っていた者もいた。ある閣僚によると、グループは5000人以上の殺傷が可能な量の弾薬を所持していた。人質の生存者からは悲惨な無差別殺人の証言が得られている。(c)AFP/Salil Panchal